「リッツとオレオ」といえば、どちらもロングランのヒット商品である。

ホームパーティで、チーズや玉子などの具材をのせた「リッツ」のCMを覚えている人もいることだろう。黒いクッキーに白いクリームの「オレオ」は、筆者にとってアメリカの甘さそのものだった。どちらもアメリカの食文化を日本に伝えたヒット商品だ。

しかし、投資家には「ナビスコショック」のイメージが強烈に残っている人もいるのではないか。山崎製パン <2212> は、すでに今年8月末をもってリッツやオレオの生産を終了しているが、「ナビスコショック」の後遺症は今後も続くのだろうか? ここで、あらためてヒット商品と株価の関係について考えてみよう。

ヤマザキナビスコが46年のライセンス契約を解消

「ナビスコショック」の引き金となるニュースが伝えられたのは、今年2月12日のことである。ヤマザキナビスコが、オレオ、リッツ、プレミアム、チップスアホイの4ブランドの製造を今年8月31日をもって解消することを発表したのだ。

ヤマザキナビスコは、1970年に山崎製パンと日綿實業(現・双日)が設立し、日本でのナビスコ(現・モンデリーズ・インターナショナル社)製品のライセンス生産を46年間にわたり担ってきた会社である。山崎製パンが80%の株式を保有している同社は主要連結対象子会社だ。ヤマザキナビスコはライセンス切れとともに「ヤマザキビスケット」に社名を変更した。

一時は年初来の安値を更新する大幅安

山崎製パンのライセンス終了の発表を受けて、前日2444円だった株価は翌営業日の2月15日に急落。一時前日比14%安の2099円となり、引け値も2196円の10%安となった。値下がり率は東証1部で上位となり、市場関係者の一部からは「ナビスコショック」とも呼ばれた。その後2月17日には年初来安値2085円まで下落する。

ヤマザキナビスコの2015年12月期の売上は402億円、営業利益は34億円で、山崎製パンの営業利益の270億円に占める割合は約13%である。契約が解消するのは先の4ブランドだけであるが、一部報道で営業利益の約13%がすべて吹き飛ぶかのように伝えられたことで市場参加者の不安が拡大した。

もちろん、売上が全部なくなることはあり得ない。日本でヤマザキナビスコが独自に開発した商品もたくさんあるからだ。

社名を変更したこの9月からは、ヤマザキビスケットの新しいロゴおよびブランドマークのもとで「チップスター」「エアリアル」などの既存製品を継続して製造・販売しているほか、新たに「ルヴァン」シリーズも加え、「リッツ」「オレオ」などの契約解消に対応している。