株価は5カ月弱で46%も上昇するが…

ちなみに、山崎製パンは契約が切れる今12月期についても増収益を予想していた。今年2月に同社が明らかにした「2016年12月期の見通し」は売上1.05兆円(前期比+2.3%)、営業利益300億円(同+14.7%)で、すでにナビスコの影響を加味しているとしている。

事実、今年4月27日に発表した2016年第1四半期の業績は売上3.0%増、営業利益57.7%増と好調だった。5月24日には、ナビスコショックを払拭するために「21世紀のヤマザキの経営方針」を明らかにし、6月1日にはナビスコブランドに変わる新ブランド「ルヴァン」を発表するなどアピールしてきた。

その結果、山崎製パンの株価は2月17日を底打ちし、第1四半期の好決算、経営方針発表、新製品発表などを手掛かりに7月8日には3050円の年初来高値を付け、5カ月弱で46%も上昇することとなった。

25年ぶりに過去最高益を更新する見通し

8月2日発表の中間決算でも、売上は2.4%増、営業利益は50.8%増と好調を持続。通期の営業利益を期初の300億円予想から340億円(前期比25.9%増益)に13%上方修正した。今期の利益は25年ぶりに過去最高益を更新する見通しである。

山崎製パンは、今回の危機に正面から向き合い、グループをあげて品質向上と新製品開発に積極的に取り組み「厳撰 100 品」を中心とした主力製品の拡販に取り組んできた。高品質・高付加価値戦略を推進するとともに、品質を向上させた値頃感のある製品を発売するなど、営業・生産が一体となった部門別製品戦略・営業戦略を推進している。

投資家の不安は完全に消えていない?

しかし、株価の動きはきまぐれである。好業績で上がっていたにもかかわらず、9月の契約終了前に再び下げはじめた。7月8日の3050円の年初来高値から下落基調となり、8月31日には2288円まで25%下げた。これからも実際の影響を見ながら株価は形成されていくのだろう。

企業にとって、長年にわたって築き上げたブランドイメージを解消するのは大きなリスクをともなう。たとえばバーバリーを50年間ライセンス契約していた三陽商会 <8011> は、契約打ち切り前の2015年上期に好決算を発表した後、契約解消後の下期には一転赤字に転落した。ブランドイメージを象徴する商品を失うのは、やはり大変な事なのだ。

山崎製パンは、これまでグループをあげて製造・販売が一体となり「ナビスコショック」に対応してきたが、実際に契約が終了する9月以降の懸念は完全になくなったわけではない。少なくとも株価の動きを見る限り、投資家が抱いている不安は、完全に払拭されていないということなのだろう。

来年末には競合商品を投入するか?

では、長期的にはどうなのだろうか。山崎製パンは、当面の新製品としてナビスコの4商品と競合するものは投入できない。しかし、2017年12月1日以降は、契約終了に伴う上記4商品と競合する新製品の製造販売の制限が解除される。いずれはヤマザキビスケットならではの工夫をこらした「リッツ風」「オレオ風」の競合品が市場に投入されるのかもしれない。

また、従来はライセンス契約によって制限されていた海外事業にも取り組むことができるようになる。食品メーカーではアジアに基盤を築いているブランドも多い。海外展開はビジネスチャンスを大きく広げる可能性がある。それだけに、これからも山崎製パンの業績推移とニュースフロー、株価の推移から目が離せない。(ZUU online編集部)

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