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(写真=PIXTA)

北海道の鉄道網が壊滅の危機に直面している。経営危機のJR北海道は単独で維持困難な路線を今秋にも公表し、沿線の地方自治体と対応協議に入る方針で、沿線自治体はバス転換か、自治体が鉄道施設を保有し、鉄道会社が運行を受け持つ上下分離方式かの選択を迫られる見通しだ。

既に石勝線夕張支線の廃止がJR北海道と夕張市の間で決まっているほか、留萌線の一部も12月に廃線となる。最悪の場合、北海道の鉄道交通ネットワークが大打撃を受ける可能性も浮上している。

経営悪化で沿線自治体と廃線含めて対応を検討

JR北海道は運賃収入の低迷や修繕費、安全対策費の負担を先送りしてきたことが影響し、2017年3月期の経常損益が175億円の赤字になる見通し。このまま全線を維持し続ければ、毎年200億円近い赤字が生まれる。借入金の残高も2019年度に1500億円に膨らむ見込みとなり、鉄道事業の抜本的な見直しを検討している。

現在、運行している14路線、約2600キロのうち、単独で維持困難と判断した区間を沿線自治体に提示、バス転換や上下分離方式の導入など今後の対応を協議したい意向だ。

見直しの対象となる路線は明らかにされていないが、営業距離1キロ当たりの1日平均旅客輸送人員を表す輸送密度で線を引く場合、2000人未満を目安にすれば札幌市周辺を除く路線の大半、500人未満なら道北や道東の多くが廃線の検討対象になるという。

JR北海道によると、2014年度に運行していた14路線30区間はすべて赤字で、うち7路線10区間が輸送密度500人を下回り、運賃収入だけで燃料費も賄えない状態に陥っている。

JR北海道は9月中旬にも関係自治体との協議に入ると見られていたが、8月の相次ぐ台風で根室線や函館線、石北線などに路盤、橋梁の流出、電柱破損、電線の切断が相次ぎ、今も運転再開できていない区間が多い。このため復旧を最優先し、自治体との協議を先送りしている。

鉄道事業の見直しは8月の北海道議会新幹線・総合交通体系対策特別委員会で取り上げられ、北海道交通企画課は「今後見込まれる巨額の経常赤字を線区の見直しだけで解消しようとするなら、北海道の公共交通ネットワークに非常に大きな影響を与える」と強い危機感を示した。

高橋はるみ知事はJR北海道の島田修社長に対し、事業範囲の見直しを拙速に行うことなく、自治体の意見を踏まえて慎重に対応するよう申し入れている。

夕張支線の廃止は地元と合意、12月には留萌線の一部を廃止

今回、事業見直しの検討対象となるとみられる区間では、石勝線の夕張支線(新夕張-夕張間16.1キロ)の廃止がJR北海道と夕張市の間で合意に達した。夕張市の鈴木直道市長が条件を付けて自ら廃止を申し入れたのをJR北海道が受け入れた形だ。

夕張支線は2014年度の輸送密度が117人しかなく、全道で3番目に少ない。大正時代に建設され、老朽化した橋やトンネルもあり、存続には多額の改修費が必要になる。

市は抵抗しても廃止が必至と受け止め、自ら廃止を申し入れることでバスなど代替交通網の整備などにJR北海道の協力を約束させようと考えた。このため、廃止の条件として市内交通網の見直しへの協力、鉄道関連施設の無償譲渡、JR北海道社員の市への派遣を加えている。

市は中心部に図書館やホール、子育て支援機能を持つ拠点複合施設を整備し、各地区とバス路線で結ぶコンパクトシティ構想を持つ。市は財政再建中の苦しい財政事情だけに、JR北海道の支援でピンチをチャンスに変えようとしている。

路線見直しに先立ち、廃止が決まっていたのが、留萌線の留萌-増毛間16.7キロだ。運行を終えるのは12月。2014年度の輸送密度はわずか39人で、100円の収益を上げるのに4554円もの経費がかかるお荷物区間になっていた。

沿線の留萌市、増毛町とも存続へ向けて抵抗を続けたが、人口減少により利用客の増加が見込めないこともあって、廃線に同意せざるを得なかった。