上下分離方式なら沿線自治体に重い負担

沿線住民はバス転換より上下分離方式でも鉄道の存続を望むだろう。鉄道の方がバスより雪に強いからだ。三重県の伊賀鉄道、富山県の富山地方鉄道などが導入、三重県と岐阜県を結ぶ養老鉄道でも移行が決まっている。

ローカル鉄道の赤字で大きいのは、施設保有の経費だ。このため、上下分離方式は鉄道会社にとって一気に負担を軽減できるメリットがある。

JR北海道は鳴り物入りで3月に運行を始めた北海道新幹線が50億円近い赤字を1年間で生む見通し。今回の台風被害復旧にも数十億円規模の費用がかかりそうなだけに、上下分離方式なら運行を続けても良いと考えているとみられる。

しかし、北海道の沿線自治体は急激な人口減少と高齢化社会の進行で厳しい財政事情のところがほとんど。鉄道施設を保有できるだけの余力を持つ自治体は多くない。増毛町町民課は「うちの財政では難しい。首都圏や京阪神の自治体ならともかく、北海道でこの方式が推進できるとは思えない」と語った。

JR北海道の経営を立て直すには年間200億円ほどの収支改善が必要になる。すべての路線を維持することができないのは事実だが、鉄路を失った地域が住民の足を確保するのも容易でない。路線見直しに当たり、公共交通機関として沿線自治体と納得いくまで協議する姿勢がJR北海道に求められている。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。