3)国債の保有の減少

銀行の最大の長期投資は国債であるが、国債の保有残高は2012年3月末をピークに下落に転じている(図表9)。

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16/3月末時点で、残存期間5年を超える国債残高は保有国債全体の2割弱で、金額にして約10兆円に留まる(3メガ合計、図表10)。この金利が0.2%上昇しても200億円(今期会社予想経常利益約3兆円の0.6%)の増益にすぎない。

マイナス金利導入後、大手行では若干国債のデュレーションを長期化しているが(図表11)、これに伴う金利収益拡大のメリットもまだ限定的である。

しかも、今後これを更に長期化できるかというと、先に述べた資産負債の金利ミスマッチに対する規制もあり、更に、来年以降、今はゼロとなっている国債投資のリスクウェイトが見直される可能性が高まっている。このため銀行は、現時点で国債リスクを安易に増やすわけにはいかない。

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長期金利の見通しと金融機関の株価

日銀の総括検証後、図表2に示したような施策が取られた場合、長期金利は更に上昇するだろう。しかし、上記で見てきたとおり、それだけでは、収益メリットは限定的である。

更に、長期金利のみが上昇すれば円高が誘発される可能性が高い。為替に対する影響を回避しつつイールドカーブをスティープ化させるには、銀行の収益ダメージの大きいマイナス金利の深掘りが現実味を帯びてくる。

従って、今後、金融政策の手段としてイールドカーブのスティープ化説が強まれば、銀行にとっては、収益のマイナス影響がプラス効果を上回る可能性が高い。更なる長期金利上昇期待は、株価上昇要因と捉えるべきではないだろう。

大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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