マーケットのエコノミストとしての重要な仕事は三つあると考える。

一つ目の重要な仕事は、データの「観察」である。データを「観察」して何をするのかというと、データの相関関係を発見することである。そして、その相関関係の重要性をマクロロジックで裏付ける。

分析の基本は「観察」、そこからアイディアに落とし込まれる

経済指標同士であったり、経済指標と金利などのマーケット指標の間であったり、相関関係の分析を基にして、経済やマーケットの動きへの理解を深めることができる。最終的には、そのようなアプローチにより、ロジカルな予測を作ったり、政策や投資のアイディアに落とし込んでいくことになる。

一例として、企業貯蓄率と財政収支の相関関係(この場合は逆相関)がある。

日本経済の大きな問題は、マイナスであるべき企業貯蓄率が、恒常的なプラスの異常な状態が継続し、企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力、そしてリストラが、総需要を破壊する力となり、内需低迷とデフレの長期化の原因になっていることだ。

企業活動が弱くなり、企業貯蓄率が上昇し、過剰貯蓄が総需要を破壊していき、景気が低迷すれば、税収が減少し、景気対策も必要となり、財政赤字は増加する。逆に、企業活動が強くなり、企業貯蓄率が低下し、総需要を破壊する力が弱くなれば循環的に景気は回復し、税収が増加し、財政赤字は縮小する。

そして、恒常的なプラスとなっている企業貯蓄率に対して、マイナス(赤字)である財政収支が相殺している程度であり、財政拡大が不十分で、企業貯蓄率と財政赤字の合計である国内のネットの資金需要(マイナスが強い)が消滅してしまっていた。