医療用大麻の研究が進み、海外では使用を認められた国が増えている。すでに多くの銘柄が存在し、様々な症状に特化して処方されるようにもなってきた。こうしたマーケットに敏感な米国では、合法大麻を扱うスタートアップ企業や投資家も急増している。

医療用大麻とは、大麻に含有される薬効成分のカンナビノイドやTHC(テトラヒドロカンナビノール)を利用した生薬療法のこと。

大麻は昔から、鎮痛作用や陶酔作用が注目され、民間療法などでも利用されてきた。しかし、日本では麻薬及び向精神薬取締法で麻薬に指定され、医療目的であっても使用、輸入ならびに所持は禁止されている。

期待される効果は多岐にわたる

海外で医療用大麻が注目されているのは、その期待される効果。がん、リウマチ、てんかん、糖尿病、多発性硬化症、高血圧、アルツハイマー、緑内障、白内障、うつ病、薬物依存症など多岐にわたっている。

これらは「エビデンス(効果)が確立してはいないが、効果が認められる」とされる場合も少なくないが、実際フランスやドイツでは、薬局でも大麻の使用を許可された患者を対象に販売している。

医療用大麻は、品種ごとに含まれる大麻成分が異なるため、疾患ごとに適した大麻を使用することができる。このため、その形態も、乾燥大麻、チンキ、合成THC、抽出大麻成分といったもののほか、鎮痛・消炎パッチ、クリームなどにも広がっている。

イギリスでは大麻の成分を使用したてんかん治療薬が製薬会社によって実用化されているほか、多発性硬化症、糖尿病、アルツハイマー病などの治療への応用にも期待されている。

カナダでは自販機で買える大麻も

医療用大麻が合法化されているカナダでは、街角の自動販売機で、医療用大麻が購入できるという。バンクーバーの店先にある自販機に4カナダドル(約308円)を入れると、プラスチック製のボールに入った「コットンキャンディー」と呼ばれるドラッグが出てくる仕組みだ。バンクーバーにはこうした医療用大麻を売る店舗が400店以上あるという。

オランダは最も早く大麻の使用が認められた国の一つで、コーヒーショップで処方箋などに関係なく、大麻を購入できるようになっている。

こうした中で、米国Microsoftが合法大麻の流通支援ビジネスへの参入を決めた。ベンチャー企業と提携し、医療用大麻の流通管理を支援するのが目的だ。今まで大手企業は大麻ビジネスから距離を置いてきたが、知恵を絞るベンチャー企業の動静に刺激を受けた格好だ。米国の医療用大麻の市場規模は6500億円になる見通しだ。

ユニークなスタートアップ スマホで注文や配達簡単に

医療用大麻すなわち合法大麻を扱うスタートアップ企業や投資家は急増している。

Grasspは、カリフォルニアで創業した。スマートフォンを使い、オンデマンドで医師と患者をつなぐプラットフォームを構築している。患者IDを登録しておけば、医療用大麻を簡単に注文したり、配達してもらったりできる。快適に安全に、すぐ手に入るというのが売りだ。

Leaflyは、医療用大麻のレビューサイトとして2010年に創業した老舗。医療用大麻独特の匂いや効果など、様々な種類がある大麻だが、決め手となる情報は少ない。様々な有益な情報をユーザーに紹介する。自宅近くで買える薬局なども検索できる。

Nestdropは、2014年創業のスタートアップ。スマートフォンアプリで、医療用大麻を注文できる。西海岸の9都市で運営し、注文から1時間以内で届けるという。

Eazeもカリフォルニアで創業、同じように医療用大麻を配達する。医療用大麻だけでなく、合わせて食べることができるクッキーやチョコレートなども購入できるところが興味深い。

管理、栽培をアプリで管理

GrowBuddyは2014年にコロラド州で創業。コロラド州は、嗜好品としての大麻が店頭で合法的に販売されるようになった初めての州だ。ここでは大麻を育てる人向けのアプリを提供。大麻の管理や栽培状態をアプリで管理し、成長データを蓄積できる。失敗しない大麻作りを指南してくれるわけだ。

TruLite Industriesは、2013年ジョージア州で創業。LEDライトをガーデニング作業に取り入れることで、栽培の効率化を狙っている。栽培物の中に医療用大麻をターゲットにしており、照明システムが成長に良い影響を与えることを強調している。

合法大麻(カンナビス)をコミュニケーションツールとして展開しているのが、MassRootsだ。2013年にコロラドで創業した。The Social Platform for Marijuanaと銘打ち、合法大麻の経験や情報をシェアするSNSサービスで、投稿を通じて、近くにいる「カンナビス友だち」を増やすことができる。

大麻の予約購入分野でスタートしたBakerは、今や顧客管理分野に手を広げている。具体的には、地域別の市場で、顧客データを細かく分類。カスタマイズされたプロモーション用のテキストやメールを顧客宛てに送信できるようにし、店舗に設置されたタブレットで確認できる。医療用大麻は、製品ごとに分野が細分化されていたため、こうしたデータがビジネス拡大に結びついた。

米国でのスタートアップの状況を見ると、今後マーケットはさらに拡大しそうな勢いだ。大麻に対する意識も変化が予想される。日本としても議論を深め、何らかの対応が待たれるところだ(ZUU online 編集部)