世界中から観光客が集まり、人気のある京都。特に町家をリノベーションして住みたいという人が増えていますが、住んでみてこんなはずじゃなかったと後悔することもあると聞きました。住む前に、どんなことに気を付けるべきなのでしょうか。
「京都」というブランドが人気を集める
先月(2016年7月)、日本を訪れた外国人観光客が229万7000人(日本政府観光局調べ)になり、過去 最高になったそうです。特に観光目的のゲストにとって京都は人気のよう。旅行口コミサイトのトリップアドバイザーが発表した「外国人に人気の日本の観光スポット2014」でも、京都の「伏見稲荷大社」が見事1位に輝いています。
筆者も京都が好きで年に何回も訪れますが、以前に比べてホテルなどの宿泊施設を確保するのが困難な状況になっています。そこで「京都にもう1軒自分の家がほしい、できれば町家を素敵に改装して住みたい」と考え始めました。そういった人たちは多いようで、東京で説明会があるとたくさんの人が集まり人気を集めています。
京都在住の知人たちが、「そんなに簡単じゃない。町家に住むには向き不向きがあるよ」と様々なアドバイスしてくれました。今回は彼らの話を参考に、「京都の町家に住む」ための超えるべき、いろいろな問題について考えてみましょう。
「建物」というハードの問題
一言で京都の町家といっても、内容は様々。統一された見解はないようですが、一般的にウナギの寝床と言われるような、奥行が長く間口が狭い敷地形状で、構造は伝統的な軸組木造が中心です。
基本的に店舗や作業場が付いた住宅が多く、通り庭や続き間・坪庭などがあるか、現状はリフォームされていても過去にあった建物を京町家と呼んでいるようです。瓦屋根、格子戸、虫籠窓、土壁などが外観の特徴としてあげられますが、いずれも近隣との境界が密接だったり、現在のテラスハウスのようにつながっていたりといった特徴もあります。
京都は「夏暑くて冬寒い」という気候的に厳しい面があります。「家のつくりようは、夏をむねとすべし」と徒然草で兼好法師が記したように、京都の場合、夏の暑さに対応した造りになっているようです。建具が可変性に富み、襖や障子から御簾や葦戸に替えることで家の中に風を通し、開口部には簾を垂らして直射日光を避ける工夫がなされています。
そのかわり「表から奥まで続く通り庭の連続した土間」、「たてつけの悪い建具の間から入る隙間風」など、冬の厳しさに耐える構造にはなっていません。京都の冬の寒さは「底冷え」と言われるように、体の芯から冷えるような厳しい寒さが特徴です。
また耐震構造という点では、非常に厳しい面があります。壁の筋交いがない、土台が敷設されていないなどの建物が多いからです。また遮音性も低く、お隣の声が聞こえるというようなことは日常茶飯事です。
いずれにしても町家に住むには、ある程度「自然」とうまく付き合っていく必要がありそうです。リフォームするにしても、専門知識のある人に相談しないと難しいでしょう。
「おつきあい」というソフトの問題
現在では「京町家」といえば、1つひとつの建物のことを言いますが、中世から近代までは、「通り」と「町家」は切り離せないもので一体化していました。美術館などで見る「洛中洛外図」では、通りの真ん中に共同の便所や井戸があり、通りは公共施設の役割を果たしていたようです。
町としてのコミュニティは通りを挟んだ「両側町」として機能してきたわけです。町家を改装したゲストハウスなどに泊まると、ご近所の人が通りを掃除する声で起きたりすることもあります。
京都発祥と言われる町内会のお祭り「地蔵盆」などは、地域コミュニティの特徴的なものでしょう。よく言われる「京都のいけず文化」は、「日本の田舎の密接なコミュニケーションの息苦しさ」が洗練されたものという印象を筆者はもっています。別の地域から転入してきた場合、その場所の町内会に参加したり、祭りに参加したり、コミュニティに溶け込む必要があるのは同じことではないでしょうか。
最近では京町家を改装して、カフェやゲストハウスにしている若い人達が増えています。この中には事業を応援して客になってくれることもあるようです。そんな彼らから決まって出てくるのが大家さんの話。東京では借り手と貸し手の関係が希薄になって、一度も会わずに済むことが多くなっていますが、京都では「大家と店子」という密接な関係がまだ続いているようです。
ちょっとめんどくさい、だけど人間的といった結びつきを求める人には、いい環境だと思います。「近所づきあいが苦手」、「プライバシーを大切にしたい」という人は、京都であるかどうかは関係なく、やはり機密性の高いマンション生活のほうがいいでしょう。
町家を保護するさまざまな解決策
最近では、町家が取り壊され、新築マンションが次々に建設されています。確かに容積率の有効活用や居住性の問題から、難しい問題も多いと思いますが、京都から町家がなくなれば、「京都」自体の魅力がなくなってしまいます。
京都市では,京都の歴史・文化の象徴である京町家の保全・再生を促進するための支援策として,『京町家再生プラン』を策定(平成12年5月9日)。「たてもの~空間の文化の継承・発展」としては、改修工事なるほど手引きの整備や公的な融資制度による改修の普及を推進しているそうです。また「ひと~くらしの文化の継承・発展」としては京町家交流ネットワークの形成も。
いずれにしても、ちょっぴりハードルは高そうですが憧れの「京町家に住む」という暮らし方。いつか実現したいな、と思う魅力に溢れています。
四宮 朱美
不動産メキキストとして不動産購入に関するあらゆるサポートを実施。20代で初めてマンションを購入して以来、売却・購入・建て替え等を体験。長年、不動産広告を制作。マンション管理士・宅地建物取引士、FP。
(提供: DAILY ANDS )
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