ダウムカカオ誕生とその背景
メッセンジャーアプリ企業をめぐるM&Aの流れが韓国のインターネット業界まで波及しています。ポータルサイト「ダウム」を運営するダウムコミュニケーションとメッセンジャーアプリ「カカオトーク」を運営するカカオが経営統合することになったのです。設立される新会社「ダウムカカオ」は時価3兆4,000億ウォン(約3,400億円)に達し、韓国のインターネット業界でトップクラスの企業が誕生することになります。
韓国のインターネット業界では明暗がはっきりと分かれておりネイバーによる一人勝ちという状況です。ネイバーはポータルサイト「ネイバー」、メッセンジャーアプリ「LINE」などを運営しています。韓国における検索サービスのシェアを見てみるとトップのネイバーのシェアが75%なのに対して、2位のダウムはシェア20%と大きく差を開けられています。また、カカオトークは韓国国内でこそシェアトップですが海外に弱く、世界でのユーザー数を比較してみるとLINEの4億人に対しカカオトークは1億3,000万人とグローバルな戦いでは出遅れてしまっています。このようなネイバーの独走を阻むために、得意分野が異なるインターネット大手2社が手を組んだというのが今回の経営統合の背景なのです。
経営統合の狙いとは
この経営統合では両者の苦手分野を補完し合うと同時に、得意分野を組み合わせることによって大きな成長を生み出すことが狙いと考えられます。経営統合発表の会見でダウムの崔世勲(チェ・セフン)代表は「カカオの強力なモバイルプラットフォーム競争力と、ダウムが保有する優れたコンテンツ、サービスビジネスのノウハウ、専門技術を結びつけることで最上の相乗効果を生み出せる」とコメントしています。
カカオはメッセンジャーアプリで大きな集客力を持っていますが、その収益はモバイルゲームが中心でそれ以外には大きな収益源がありません。ここにダウムの検索・地図・動画といったコンテンツや広告収入モデルのノウハウが加わることで、新しい収益源にできる可能性があります。また、カカオは更なる成長のためには海外市場への展開が必要となりますが、ダウムの持つ経営資源を使いメッセンジャーアプリに新しい付加価値を付けることができれば、出遅れる海外市場でもシェア獲得の原動力とすることができるかもしれません。一方、ダウムとしてもカカオトークによる集客力を生かすことによって、ネイバーに大きく差をつけられたポータルサイト運営においてシェア回復を期待することができます。
このように、お互いの強みを生かしあうことで、韓国国内でのポータルサイト運営における劣勢を盛り返し、また今後の成長のために必要となる海外展開、特にアジアへの展開を有利に進めていくことで、韓国トップのネイバーに対抗しようとしているのです。この意味ではお互いを強め合うことができる良い組み合わせと言えるかもしれません。