「からあげフェス」なるものが人気を集めている。2015年~2016年だけでも、東京、京都、愛知、福岡、宮崎、大分などで次々と開催され注目を集めている。近年からあげ専門店も全国的に増加し、からあげブームの様相を呈している。
からあげの歴史
そもそもからあげという言葉は「唐揚げ」と書くが、言葉の始まりは江戸時代であると言われている。江戸時代初期に中国から伝来した普茶料理に「唐揚げ」と書いて「からあげ」または「とうあげ」という料理があった。しかしこの唐揚げは現在の唐揚げとはまったく違うものであり、豆腐を揚げ、さらに醤油と酒で煮たものであった。
実際のからあげのはじまりは、一説には愛媛県今治市であると言われている。今治では郷土料理として「せんざんき」が食されている。「せんざんき」は今から約300年前に、近見山のキジを揚げて食したものと言われている。今でも今治市で郷土料理として食されているが、現在はキジではなくニワトリが用いられている。
現在のからあげが洋食メニューとして登場したのは1932(昭和7)年頃である。現在の株式会社三笠会館(東京・銀座)の前身である食堂・三笠が発祥と言われている。当時経営不振に陥っていた食堂・三笠の料理長が知恵を絞り、打開策として開発されたメニューが若鳥のからあげであり、洋食メニューに初めてからあげが登場した瞬間である。
これらのことからもわかるように、からあげは日本で生まれた料理であり、中華料理ではない。中国ではからあげの代わりに油淋鶏(ユーリンチー)が親しまれていたが、日本に現在あるようなからあげは存在しなかったようである。
日本唐揚協会の誕生
からあげブームの中、一般社団法人日本唐揚協会という組織があるのはご存知だろうか。この組織は2008年から活動を開始しており、からあげが一番好きでからあげを食べると幸せになれる人たちによって組織された団体である。組織の目的は「からあげを通じて世界平和を目指します」とのことである。
一見冗談のように思えるような日本唐揚協会であるが、日清フーズ、ライオン <4912> 、ハナマルキ、ニチレイフーズ、エスエスケイフーズ、アサヒ飲料、アサヒビール、J-オイルミルズ <2613> などの有名企業が協賛企業として名を連ねており、活動自体もしっかりとしたことをおこなっている組織なのだ。主な活動として、以下のような活動を実施している。
からあげフェスティバル
日本一の鶏肉消費量を誇る大分県。その中でもからあげの聖地とも言われている中津市で、年1回、中津市の有名からあげ店が一挙集結し、味比べを行うイベントを開催している。前回大会は43もの店舗が集結した。
からあげカーニバル
日本唐揚協会が推奨する店舗が集まり、人気からあげ店の味が1度に味わうことが可能なイベントを全国各地で開催している。
からあげグランプリ
日本で1番美味しいからあげ屋さんを決めるべく、毎年からあげグランプリを開催している。部門も素揚げ・半身揚げ部門から始まり、塩ダレ部門、東日本醤油ダレ部門、西日本醤油ダレ部門、中部醤油ダレ部門、手羽先部門などの数多くのジャンルごとに分かれグランプリを決めている。
ベストカラアゲニスト
日本唐揚協会がからあげの素晴らしさを多くの方々に知ってもらうためにベストカラアゲニストを選んでおり、「最もからあげを愛している人」を毎年1回、その功績を讃え表彰している。
からあげに対して熱い活動を展開している日本唐揚協会であるが、会長の安久鉄平氏はからあげは数少ない成長市場であると語っている。
2009年、中津市の人気店「もり山」が東京都に関東初の店舗をオープンした。これをきっかけにからあげブームに火が付き、東京都内にからあげ専門店の数は2009年時点で10店舗だったのが、2012年の時点で80店舗となった。人口約120万人の大分県に専門店が100店舗以上あることを考慮すると、まだまだ東京都内だけでも新規参入の余地がある。
また、安久会長は近年注目されるイスラム圏開拓の食品としても有望であると話す。からあげは宗教上の理由で食べられる食材が限られるような場合でも、鶏肉は食べても良い宗教が多く、イスラム圏開拓の食品としても注目されている。
からあげの世界広がる
現在からあげは様々な進化を遂げている。岐阜県関市の黒からあげは衣にひじきとしいたけを使ってある真っ黒なからあげが存在する。千葉県印西市にはみそピーからあげがあり、落花生、味噌を使用してある。新潟県新潟市のカレー味からあげは市内に50店舗以上も提供店舗が存在するというから驚きだ。極めつけは前述したからあげフェスティバルにてからあげソフトクリームなども登場している。
日本だけでなく世界でもからあげのブームが徐々に起こりつつある。今年7月、からあげ専門店「天下鶏ます」を運営する株式会社アジアンアキンドは、カンボジアの首都プノンペンに1号店をオープンさせる事を発表した。同社は今後タイのバンコクやベトナムのホーチミンにも進出していく方針であると表明している。
「金のとりから」を運営するシマナカも今年3月にインドネシア4号店をオープンした。日本だけでなく世界をも視野に入れている「からあげ」、今後もからあげの進化には注目していきたい。(ZUU online 編集部)