介護,介護ロボット,アベノミクス,イノベーション
(写真=PIXTA)

高齢化社会に向け様々な案件が山積するなか、介護職の人材紹介サービスを展開するウェルクスが「介護ロボット」について介護業界に関連するSNS利用者を対象に調査をしたところ、身体機能補助ロボットに「賛成」66.2%、「反対」33.8%と出たそうだ。

2020年までには介護ロボットの供給数は30倍との予想

慢性的な人手不足に苦しむ介護業界では、重労働と長時間労働というイメージがすっかり定着している。人材が集まりにくいことは介護に関わる方であればご存じのことだろう。そんな中でこのアンケート結果を見ると、業界側で支える現場の方と介護される側との乖離が大きいことが分かる。

しかし経済産業省のロボット革命イニシアティブ協議会は、2020年には500億円の市場規模とすることを目標としている。2015年での介護ロボットの市場規模が16億円(富士経済調べ)しかない事に鑑みれば、実に30倍以上だ。

早く人手不足を何とかして欲しいとの現場の声が少しでも反映されないのだろうか。内閣府の「介護ロボットに関する特別世論調査」を見ると、介護ロボットの認知度は73.8%と高い。これを考えれば、あとは介護ロボットの魅力と価格の問題だけではなのかもしれない。

介護ロボットの魅力・メリットとは

介護ロボットのメリットは何だろうか。その魅力に感じている点で上げられるのが「介護をする側の心身の負担が軽くなる」ことだ。次に考えられるのが、「介護をする人に気を遣わなくてもよいこと」だろう。介護を支える側と介護をされる側との意識の一致点がここにようやく見えて来る。

矢野経済研究所が6月24日に発表した国内の介護ロボット市場の予測(2020年度)によれば、国内介護ロボット市場はその時点で149億5000万円。普及のポイントは、メーカーとユーザーが協力して効果が出る使い方を模索しながら、定着させられるかどうかだろう。

市場規模のさらなる拡大を見込まれているのが「排泄支援ロボット」だそうだ。既にある自動密着式便器型に加え、新製品の投入で潜在需要を取り込めると見込まれる。

装着型/非装着型移乗介助ロボット、屋外型移動支援ロボット、介護施設型見守り支援ロボットは、20年度までに市場が構築されると見られ、屋内型移動支援ロボットや入浴支援ロボットは17年度以降には新製品の発売が期待されている。

介護ロボット導入につきまとう問題点

だが介護ロボットは夢のある良いことばかりではない。課題は何と言っても、安全性、価格、倫理などだろう。介護ロボットの登場を歓迎するものの、高価格や安全性に不安を感じている面もあり、普及が進まないのではないかという意見だ。

解消されるには、まず価格面が大きなハードルだ。介護ロボットが徐々に市場に普及すれば、量産化が進み、さらに価格は低下するだろう。普及の為に政府の補助金も手厚くなるだろうから、介護ロボットの利点が認識されれば広がる可能性は十分ある。

安全性は何と言っても最優先だが、経済産業省は2017年度までの重点分野(「移乗介助(装着型)」「移乗介助(非装着型)」「屋外移動」「排泄支援」「介護施設見守り」)としており、安全基準を順次整備していく方針というのだ、これもクリアできそうだ。

最後に倫理面だ。介護ロボットに介護を任せて如何なものかという問題がある。昔から介護は基本的に人間が行うものであるという観念があるからだ。それに関しては、介護ロボットを使用する際に「インフォームド・コンセント」を行いながら、倫理基準を明確に積み上げて行くしかない。

深刻な老老介護の問題解決への糸口になるか

介護ロボットは「老老介護」や「介護殺人」といった問題も解決するのだろうか。低価格品が一般的になり在宅介護にまで普及すれば、家族や介護職員を含めた負担軽減につながるのは間違いないだろう。

高齢者が増えていく日本社会で介護ロボットが普及するかどうか。それは今後数年間が勝負なのかもしれない。操作性、価格、安全性、倫理、すべてにおいて優れた介護ロボットの登場に対する期待の声は日に日に高まっている。(ZUU online 編集部)