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(写真=PIXTA)

米国の大手投資ファンドのベインキャピタル(マサチューセッツ州ボストン)が全株式を買収した大江戸温泉ホールディングス。経営破綻した地方の温泉宿の買収などをしながら、全国に施設を展開している。

大江戸温泉物語を買収した理由

ベインキャピタルが目を付けた大江戸ホールディングスは、2007年から全国で温泉施設を運営。「お台場大江戸温泉物語」をはじめ全国に30以上の施設を持っている。

温泉施設が伸びている大きな理由の一つが、訪日外国人観光客だ。ベインキャピタルが持つ外国人向け販売促進策のノウハウを活用しながら、増える訪日外国人の日本の「温泉」への興味拡大を見込み、勝負に出たのだろう。

大江戸温泉物語の宿泊者の約2割は台湾や韓国などアジアからの外国人客。ここをさらに掘り起こして営業展開をはかりたいと見られる。

チェーン店企業の経営に実績があるベインキャピタル

べインキャピタルは「すかいらーく」を2011年に買収し、経営を立て直した実績がある。こうしたノウハウを旅館施設の運営面にも生かす考えもあるはずだ。その勢いのままに九州進出を計り、長崎ホテル清風(長崎市)、別府ホテル清風(大分県別府市)も買収している。

チェーン網を増強し、食材の共同購入などの面で規模的なスケールメリットを拡大して収益力を高める計算がある。これで大江戸温泉は、温泉地である九州の施設を保有できるし、ホテル側も大手資本の傘下に入るので経営を安定化させることができる。

助っ人経営のベインキャピタル

べインキャピタルは他にも、「雪国まいたけ」や「日本風力開発」などにも資本参加をしている。伊藤忠商事と共同出資で特別目的会社を設立し、コールセンター国内最大手のベルシステムを傘下に入れている。

「雪国まいたけ」を子会社にしたきっかけは、不適切な会計処理が発覚し創業者の元社長が辞任したことだった。大株主の元社長ら創業家と経営陣の間で経営方針の対立などがあり、ベインキャピタルが介入した。

ベインキャピタルは経営に困った企業に手を差し伸べる形でビジネスを展開している。「雪国まいたけ」についても子会社化して経営問題の早期に解決、経営を立て直して、成長が見込まれる中国・ロシアなどへの事業展開を図っている。今後は海外事業で収益の向上を狙うのだろう。

この他にもドミノ・ピザ ジャパン、日本風力開発、ジュピターショップチャンネル、サンテレホン、ディーアンドエムホールディングス(DENON)など多くの企業に投資している。特定の業種に絞らず、並行して複数の異業種の企業経営に関与しているのだ。

豊洲に新しい施設「万葉倶楽部」が誕生する予定

気になるのは、全国で日帰り型と宿泊型の温泉施設を展開する「万葉倶楽部」だ。2019年8月に東京・豊洲で「万葉の湯」を開業予定だそうだが、距離的に近いので共存できるかどうかが不安材料でもある。

違いを出すとすれば、「湯」そのものでということになるだろうか。大江戸温泉物語の特徴は、地下1400メートルからくみ上げる強塩温泉。その茶褐色な湯に対し、万葉の湯は無色透明で、手触りが良いという売りだそうだ。神奈川・湯河原の自家源泉から毎日、タンクローリーで新鮮な湯を運ぶという。横浜みなとみらいの施設では既に行っているので実績はある。

大江戸温泉物語はテーマパークのような雰囲気で、ファミリーや若者グループの他に外国人にも好評だ。一方の万葉倶楽部は、マッサージのサービスやリクライニングチェアなどの機器が充実しているという。「癒やし」がテーマの温泉になりそうだ。

今後、大江戸温泉物語、つまりベインキャピタルに求められるのは、万葉の湯と差別化を図って共存することだろう。たとえばWebサイトも英語、中国語だけでなく、多言語化を積極的に進め、外国人観光客の予約の利便性をより高める必要があるのではないだろうか。(ZUU online 編集部)