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2014年5月1日付け、新唐人テレビの報道によりますと、ロシアとの政情不安からアメリカマンハッタンにおける最大の外国人投資家は、ロシア人から中国人へと変わり、中国人資産家による不動産投資は急増しているとのことです。ロイター通信によると、ニューヨーク市の物件について、不動産仲介大手5社全てが販売件数・販売価格で中国人をトップに挙げているとのことで、2007年から始まる米国住宅バブル崩壊後の主要都市の住宅価格下落により、多くの中国人投資家が上海、シンガポール、香港市場からシフトしているとのことです。
2005年7月の人民元切り上げ以降、人民元高と海外不動産の割安感から、チャイナマネーが欧米不動産市場へ流入しておりますが、為替だけではなく、様々な要因により、チャイナマネーが世界の不動産市場へ広まっております。本稿では、チャイナマネーが世界の不動産を席巻する背景についてご説明したいと思います。


中国人富豪の不動産投資の現状

ロイターの記事によると、これまでの中国人の傾向として、ニューヨークの100万から500万ドルほどの物件を 投資目的で2.3件同時に購入する傾向があったそうです。しかし、最近では1885万ドルほどの物件や、81階の全フロア、5500万ドルの物件など高級物件を購入するなど、高級な物件を購入するようになっているとのこと。さらに、オーストラリアの高級新築住宅の購入者ランキングにおいても中国がトップ。2013年のオーストラリア不動産市場の海外投資家ランキングにおいても投資家ランキングで本土の中国人がトップとなっており、海外投資全体のまさに11.4%を占める状況とのことです。
ロンドンにおいても、2013年海外不動産購入者トップに立ったのは中国人で、100万ポンドを超える購入物件全体の、まさに6%が中国人によるものでした。


不動産投資に向かう背景

三井住友トラスト基礎研究所の報告によると、中国の個人投資家が海外不動産へ投資する背景には、下記8つがあるとのことです。

①移民・移住
出国制限緩和により、より良い生活を望む中国人が海外を目指すようになり、リタイアメントなどを機に海外で暮らすようになった。中国の住環境の悪化など内部的要因と、海外からの富裕層の移民を奨励する国が永住権やパスポートを付与する外部的要因も併せて、移民・移住ニーズが高まっている

②留学
中国人富裕層の間で子女教育への関心度は高く、留学先の先進国において住宅を購入するケースや、投資先に子女が居住することによる資産管理の面でメリットあるなど。

③先見観の減退と未成熟な賃貸市場
中国国内において住宅価格は上昇したものの、賃貸をベースとするインカゲインは伸びていない。中国においては不動産投資の利益の源泉はキャピタルゲインであり、未成熟な賃貸市場に起因しているものと考えられている。過去のような住宅価格の上昇は期待できず、賃貸需要が見込める海外の不動産市場が投資対象として考えられるようになった。

④住宅購入制限政策
2010年以降、中国において、住宅ローンの頭金比率の引き上げ、課税強化、購入戸数の制限などの住宅購入制限政策が施行され、投資資金が国内から海外へと向かった。

⑤所有権と建物の耐久性
中国では個人による土地の所有は認められておらず、土地使用権と建物を取引する不動産市場となっているため、政府により土地が収用されることを懸念する個人投資家もいる。近年では建物の耐久性や品質不具合も問題視されるようになり、安全性の高い海外不動産へと需要が高まった。

⑥資産保全とリスク分散
文化大革命の歴史や共産党幹部の失脚の絡みから、自身の資産保全へのリスクが高まり、中国国内に資産を置くことに対する警戒心から、海外投資というリスク分散の考えが浸透してきている。

⑦人民元高と海外不動産の割安感
2005年の人民元高と2008年のリーマンショック以降の海外不動産の下落。

⑧ステータスシンボル
中国人富裕層の間で海外の不動産がステータスシンボルとなっている。