東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏にノーベル生理学・医学賞が贈られることが、2016年10月3日に発表された。評価された氏の業績は、「オートファジーのメカニズムの発見」とされている。ギリシャ語由来である「オートファジー」が意味するところは、「自分を食べる」といったところ。細胞が不要になった構成要素を自ら分解し、それを再利用する仕組みのことだという。翌10月4日の東京株式市場では、早速「オートファジー」の関連銘柄が買われるなど、慌ただしい動きが続いた。
そもそも「オートファジー」とは何か?
例えば栄養不足の状態に陥ると、細胞の内部に脂質の膜でできた小さな袋が現れる。細胞は使わなくなったタンパク質や不要不急の細胞小器官をその袋に吸収した上で、自らが生存していくのに必要なアミノ酸などに分解して再利用する。こうした現象自体は1950年代から報告されていたのだが、その具体的なメカニズムは謎のままになっていた。
大隅氏は1980年代後半から酵母を使った研究を進め、1990年代になって初めてオートファジーに必要な遺伝子群を明らかにすることにより、オートファジーに関する研究が大きく進展する端緒を開いた。
オートファジーの機能が十分に発揮されないと、パーキンソン病や2型糖尿病,ある種のがんなどの疾患を誘発することになる。こうした生理学的・医学的な重要性が明らかになったのは、大隅氏による1990年代の研究があったからこそだという。