イノベーション衰退でランキングダウン
トップ10を死守した日本だが、その中身を見ると厳しい現状が浮かび上がる。まず、ランキングの足を大きく引っ張った項目がマクロ経済環境。138の国・地域のうち104位という順位に沈んだ。財政赤字に加え、先進国でも最悪とされる国の借金の水準がランキングに響いた。さらにWEFは、インフレ率についても、2%の目標を掲げたものの、0%に近い水準で推移していると指摘。また、労働市場の柔軟性の項目では、雇用や解雇がスムーズにできない上、女性の雇用者数の評価が低かった。
一方、12項目のうちビジネスの洗練度(2位)、市場規模(4位)インフラ(5位)、健康・初等教育(5位)、イノベーション(8位)の5つの項目がトップ10入りした。ビジネスの項目の細部では、地元供給者の量、バリューチェーンが世界トップの評価を受けた。イノベーションについては、科学者と技術者の人材(3位)、企業の研究開発への投資(4位)、科学研究機関のレベル(13位)が評価されたが、2007年-2015年まで守ってきたイノベーション項目での世界トップ5からは転落。WEFは日本の技術革新力に衰えがみえるようだと指摘した。
アベノミクスに陰りがみえ、マクロ経済の環境が上向きそうにないなか、安倍政権が掲げる「女性の輝く日本へ」で、女性の雇用機会を拡大できるかが来年以降のランキングで評価が下されそうだ。
韓国、中国は停滞 昨年と同じランク
アジアのライバル国では、韓国が26位にランクイン。いくつかの評価対象項目で改善がみられたものの、3年連続で同じ順位にとどまった。日本にとってランキングの足手まといとなったマクロ経済環境では、韓国は財政の健全性が評価され、昨年より2つ順位を上げてノルウェー、カタールに次ぐ3位となった。
また、インフラ(10位)の項目も初めてトップ10入りを果たした。一方、労働市場の柔軟性は日本同様評価が低く、労働者と雇用者の関係(135位)、雇用と解雇の柔軟性(113位)、女性の雇用者数(90位)などの項目で後れを取った。さらに、スマートフォン市場など世界の電子機器部門をリードする韓国メーカーだが、イノベーションの評価は20位にとどまった。科学者と技術者の人材(39位)、科学研究機関のレベル(34位)などが日本に大きく水をあけられる結果となった。
世界最大のマーケット規模を誇る中国は全体のスコアはアップしたものの、韓国と同様3年連続の同じ順位の28位にランクイン。約14億人の市場は引き続き、マーケット規模で世界トップを守ったほか、高等教育と訓練の項目で14ランクアップの54位、ビジネスの洗練度も4ランクアップの34位と改善をみせた。マクロ経済環境は8位となったが、WEFは財政赤字が2014-15の期間と比較すると2倍に増加したと指摘し、こうした財政状況の悪化が足かせとなった。
また、商品と市場の効率性(56位)については、ビジネスを始めるのに1ケ月以上の時間を要し、外資系企業が中国市場に参入するのに高い障壁が競争原理を欠いているのが問題。さらに、金融部門(56位)も競争原理の欠如などからランキングを落とす結果となり、全体の順位アップにつながらなかった。(ZUU online 編集部)