快進撃を続けるサイゼリヤの強さ

ライバル各社が苦しむなか、快進撃を続けるサイゼリヤの強さは、何といっても提供するメニューの安さ。例えば、スパゲティのペペロンチーノは299円、イタリアパルマ産の生ハム399円、グラスワイン100円(いずれも税込み)と、ワンコインで食事はもちろん、お酒とおつまみも楽しめる価格設定となっている。低価格の戦略は、安さにひかれた消費者の集客アップが期待できる一方、薄利に陥る諸刃の剣ともなりかねない。

サイゼリヤが洋食屋からイタリア料理に転身した1973年当時は、いまでこそ日本人にも馴染みのあるイタリア料理も、一般的には普及しておらず集客に苦労した。そこで、商品内容を変えずに価格を元の7割引きで提供し、安さに驚き、食べないと損という雰囲気を醸成した。

リーズナブルな価格設定と時代の遷移のなかで、イタリア料理も日本の食文化に浸透し、サイゼリヤの名も広く知られるようになった。1980年以降、物価変動や消費税の導入など、外的要因が刻々と変化してきたが、メインの価格帯には手を付けず、注文したくなる価格を目指して企業努力を続け、こうした姿勢で節約マインドが高まる中でも気軽に外食を楽しみたい消費者を離さない。

今後の「値上げ予定なし」で低価格路線継続

安さの実現は、経営哲学だけでは成り立たず、サイゼリヤでは自社で原材料の調達・流通・販売を一括して行い、問屋など仲介業者にかかるコストを削減し、利益を自社に取り込んでいる。さらに、国内1000店舗を超えるスケールメリットも調達コストを抑えるのに奏功する。しかし、コストを抑えるために、むやみやたらと出店攻勢をかけるわけではなく、2016年8月期では、33店舗を新たにオープンさせた一方、31店舗を閉鎖。閉店した店舗は前年同期比で売上高を30億8000万円押し下げていたため、適切に見切りをつけ、新規店舗の開拓とバランスを保つ。

飲食チェーンが悩む原材料価格の高騰は、サイゼリヤにとっても例外ではなく、エビやチキンの価格上昇は営業利益4億1000万円を吹き飛ばした。一方で、円高による為替益が10億5000万円、原油安を受けた電気・ガス単価の減少で光熱費が7億9000万円減少したことなどが営業利益を押し上げた。 サイゼリヤは2017年8月期連結決算について、売上高0.5%増の1457億、営業利益3.3%増の93億、純利益3.5%増の57億円を見込む。

足元では、今夏の台風の上陸で野菜の価格が高騰し、飲食業界は対策に乗り出し、ロイヤルホストはサラダで使用する野菜を変更する可能性を自社のホームページで告知。

サイゼリヤも野菜を調達する産地を分散させる予定で、利益への影響を警戒している。メニューの値上げについては、低価格帯が支持を集めていることから、今後も据え置く方針。デフレへの逆戻りが懸念される日本経済で、サイゼリヤの存在感はますます高まっていきそうだ。(ZUU online 編集部)