年金記録問題により、国民における年金制度への不安は一気に高まったのは事実である。実は、その年金記録問題に関わっているのが今回解説する基礎年金番号制度である。
後述するが基礎年金番号は本来、煩雑だった年金番号管理をシンプルなものに変更するために導入されたものである。しかし、その導入による過程で、「宙に浮いた年金記録」というものを生み出してしまったのだ。
現在は基礎年金制度が定着し、問題以後管理体制も見直されたため、以前に比べれば安心感はあると言える。ただし、今後もこうした問題が起こらないとは言えない。そのためにも年金への関心を深め、備えてほしい。特に、自身の年金基礎番号、加入期間については定期的に確認することをお勧めしたい。
基礎年金の番号とは
基礎年金番号とは、公的年金制度で共通して使用する管理番号のことである。公的年金とは、国民年金、厚生年金、共済年金の3つを指す。これらの情報を一人一つの番号で共通して使用するものである。「4桁−6桁」の10桁の数字で表され、一人ひとり異なる番号が割り振られている。平成28年よりスタートしたマイナンバー制度とは別物であるので、注意したい。
平成9年1月1日より、基礎年金番号がスタートした。それ以前から年金に国民年金、厚生年金に加入していた方は、その時点で加入していた番号がそのまま適用されている。それ以前に共済年金に加入していた方には、新たな番号が割り振られている。
年金に関する各種手続きには、これらの基礎年金番号が必要となっている。もちろん、受給を開始する場合にも必要となるので、大切に保管してほしい。
番号が導入されたメリット
導入以前は、加入していた年金制度ごとに異なる番号が割り振られ、管理していた。つまり、一人が複数の番号を持っていた状態である。転職をした場合には、その都度新しい番号が割り振れられ、それぞれの番号に対して加入状況などの照会を行うことになっていた。
それらを一人一つの番号に統一することで、管理負担を軽減し、間違いをなくすことが目的の一つである。
加えて自身の年金記録の確認も、以前であればそれぞれの番号ごとに必要であったが、現在では一本化されているため、照会の時間短縮や管理のしやすさがメリットである。このように、行政サービスの向上、管理のし易さという側面と、利用者の利便性を図るために導入された制度である。
マイナンバー制度との違い
注意していただきたいのは、去年2016年より開始された「マイナンバー制度」と基礎年金番号は別物であるということだ。
基礎年金番号は原則20歳以上のものが付与されるが、マイナンバー制度は全国民に一人一つの番号が割り振られている。マイナンバーは主に、税金、健康保険、雇用保険の分野で活用される。加えて、マイナンバーは災害時などにも活用される。
もちろん、年金制度との紐付けもあるが、年金においては基礎年金番号が重要である。逆に言えば、基礎年金番号は年金に関するデータしか対象としていない。マイナンバーと基礎年金番号は異なる番号なので、必ずどちらの番号もすぐにわかるように保管しておく必要がある。
基礎年金番号の確認方法
基礎年金番号は、自身の年金手帳に記載されている。基礎年金番号制度が始まった平成9年1月1日からは青色のものになった。それ以前に年金に加入していた方は、オレンジ色の手帳である。また、「基礎年金番号通知書」というものが郵送されているはずなので、そちらも併せて確認してほしい。
また、自営業の方などで国民年金の支払いを自身で行っている方は、口座振替額通知書、領収書にも基礎年金番号が記載されている。それ以外にも、年金証書、ねんきん定期便など日本年金機構から送付されたものにも記載されている。
基礎年金番号で困った時の対処法
基礎年金番号がわからない場合
自身の基礎年金番号がわからない場合には、自身の勤務先にまず確認をする。ほとんどの場合それで解決するが、もしそれでもわからない場合には年金事務所への確認が必要となる。
紛失した場合
また、年金手帳を紛失してしまった場合には、再発行の手続きをする必要がある。日本年金機構のホームページから必要書類をダウンロードし、提出をする。
登録内容に変更がある場合
登録内容に変更があった場合には、変更の手続きが必要だ。国民年金のみ加入している場合には、自身の居住する市区町村の年金課で手続きを行う。その際には、申請書に加え年金手帳が必要である。
会社員の方と結婚をし、配偶者の扶養となる場合には、配偶者の勤務先に所定の手続きをする。その際にも年金手帳は必要となるので、紛失している場合には再発行をしておく必要がある。
自身が厚生年金に加入している場合には、勤務先で変更の届けを提出することになる。
年金は、現役世代の方にはなかなか実感の湧きにくいものである。ぜひ、これを機に自身の基礎年金番号の確認と、併せて加入期間などに誤りがないかを点検してほしい。