従業員が30~99人規模の中小企業における企業年金の実施状況は、十分とはいえません。特に、退職給付のない企業は2008年の18.3%から2013年の28%(厚生労働省資料『企業年金制度の現状等について』より)と、わずか5年で10ポイント近くも増えています。日本版401k(確定拠出年金)は、このような中小企業の福利厚生制度として有益ですが、いざ導入しようとすると「事務手続きの煩雑さ」と「導入・維持のコスト」が大きな壁となるのが現状です。
そもそも、日本版401kってなに?
「確定給付年金」は、将来の年金給付額があらかじめ確定していて企業が運用するのに対し、「確定拠出年金」は、毎回の掛け金が確定する反面、将来の給付額が加入者の運用の結果によって決定する「日本版401k」です。米国に内国歳入法401条(k)項に基づく制度があり、それを参考にしたため、日本版401kと呼ばれています。
中小企業の日本版401k導入に立ちはだかる「手続き」と「コスト」の壁
企業が日本版401k制度を開始するために選定した運用管理機関と契約を結ぶ際、さまざまな書類が必要となります。運用管理や資産管理に関する契約書をはじめ、事務委託関連の書類や登録する従業員データの作成などに多くの時間と手間を割くことは、中小企業にとって大変な作業となります。
契約した金融機関へ支払う、導入時や毎月の維持管理にかかるコスト、従業員に対する401k運用の研修費用も必要となります。そもそも、拠出金の負担が大きなハードルとなる中小企業もあるでしょう。今まで厚生年金基金へ加入していた企業が、企業型の日本版401kへ移行する場合と異なり、拠出金を新たに準備するのは中小企業にとって大きな負担となり得ます。さらに、窓口となる金融機関側が日本版401kの導入条件として従業員数の下限を設定しているため、従業員数が条件に満たず導入できないというケースも存在します。
このように中小企業が日本版401k導入に踏み切れない現状を改善し、企業年金を普及、拡大させるために「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が制定され、いくつかの点が改正されました。
「簡易型DC制度」と「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」
中小企業の日本版401k導入促進には「簡易型DC(確定拠出年)制度」と「個人型DC(確定拠出年)への小規模事業主掛金納付制度」が大きく影響を及ぼすとみられます。
「簡易型DC制度」とは、従業員100人以下の企業を対象として「運営管理機関契約書」や「資産管理契約書」など、導入に必要な書類を半分以下に省略する制度です。また、窓口となる金融機関に行政手続きを委託することもできるようになります。これにより、中小企業の日本版401kの導入が簡易化され、中小企業の採用拡大が見込まれることでしょう。
もう一つの「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」は、簡易型DC制度の導入も厳しい中小企業にとって嬉しい制度です。従業員100人以下の中小企業において、個人型確定拠出年金(iDeCo)を導入し、会社(事業主)が追加で掛け金を援助することができるようになります。なお、事業主が拠出する全額は非課税の損金扱いとなります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は中小企業の救世主となるか?
昨今、大企業と中小企業との年金格差は拡大の一途をたどっています。中小企業がいくつか集まってつくっていた厚生年金基金が続々と解散する中、企業年金の加入率は減少し、さらに大企業と比べて半分ほどの退職金しか得られないのが現状です。中小企業で働く従業員にとって、iDeCoは自分の老後を自分で守る、自助努力の方法の一つになっていくでしょう。
今後の法改正によって、事業主の導入メリットも増えることで加入拡大が促進され、老後資金を形成するためのメイン手段となる日も近いのではないでしょうか。(提供: IFAオンライン )
【人気記事 IFAオンライン】
・
地方に富裕層が多い理由とは?
・
年代別にみる投資信託のメリット
・
ポートフォリオとアセットアロケーションの考え方
・
帰省の時に話しておきたい! 「実家の遺産・相続」の話
・
IFAに資産運用の相談をするといい3つの理由