シャープ <6753> が営業黒字となる見通しである。同社は赤字の垂れ流し体質から抜け出すことができずに、東証1部から2部に降格。現在は台湾の鴻海(ホンハイ)傘下で経営再建中だ。シャープに何が起きたのだろうか? これまでの経緯を振り返りながら、同社の現状に迫ってみよう。

「目の付けどころが、シャープ」だった時代

シャープのキャッチフレーズは「目の付けどころが、シャープでしょ。」だった。テレビCMでも盛んに放映されていたので覚えている人も多いのではなかろうか。

確かに目の付けどころは良かった。国産第1号のテレビ、日本初の量産化した電子レンジ、世界初の液晶ポケット電卓、PDAとして大ヒットした電子手帳、プラズマクラスター、太陽電池パネル、カメラ付き携帯電話、液晶時代の幕開けとなったAQUOS液晶テレビ、ウォーターオーブンなど、時代を変える商品を次々に開発・販売してきた。

そんなシャープがキャッチフレーズを刷新したのは2010年。新しいキャッチフレーズは「目指してる、未来がちがう。」だった。その後、悲惨な未来が待ち受けているとは誰が想像できただろうか。

「目指す未来」を誤ったシャープ

シャープの経営危機が表面化したのは2012年3月期からだった。主因は液晶や太陽電池の過剰ともいえる設備投資とされている。シャープはヒット商品を次々と生み出す電機会社から「装置産業」的な巨額の設備投資に頼らざるを得ない体質に変化していたのだ。当時の経営陣が舵取りを誤ったと言わざるを得ない。

同社は2004年、2006年に三重県で液晶の巨大工場を建設するために4000億円を投資、さらに2007年には1兆円を投じて大阪府堺に液晶と太陽電池の工場を建設した。

そのタイミングでリーマンショックが勃発、世界経済が収縮したため、売り上げは大きく減少した。同時に台頭してきた中国勢に液晶や太陽電池パネルでも追い上げられ値引き競争で赤字体質が定着してしまったのである。

そして、鴻海の傘下で経営再建へ

もちろん、シャープも黙って赤字を垂れ流していたわけではない。2015年3月期にはメインバンクのみずほ銀行と三菱UFJ銀行から総額2000億円の金融支援を受けたほか、リストラも進めていた。ただ、リストラのスピード感がなさすぎた。同じく経営危機から立ち直りに取り組んでいた日立 <6501> やパナソニック <6752> 、ソニー <6758> との決定的な差はこのスピード感にあったとされている。

シャープの経営危機を救うべく名乗りを上げたのが台湾の鴻海精密工業グループだ。電子機器の生産を請け負う電子機器受託生産 (EMS) では世界最大の企業グループの一つで、iPhoneの製造工場として有名だ。同社と「液晶のシャープ」ならシナジーも期待できる。今年8月に鴻海の3888億円の第三者割当増資の払い込みが完了し、同社はシャープ株の66%を保有する筆頭株主となった。