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(写真=PIXTA)

「自動車事故によって負傷してしまう」「自動車事故を引き起こすことで、同乗者や第三者に障害を負わせてしまう」また、「旅行中に怪我をしたり、持ち物を破損してしまったりする」等々、長い人生の中では思わぬアクシデントに出会うことがある。このような思わぬアクシデントに備えてお金を掛けておく保険が「損害保険」だ。

損害保険とは何か、どのような種類があるのかといった概論から、具体的な個人向けや法人向けの損害保険の紹介、損害保険を契約する時の注意点までを紹介する。ぜひ一読し、もしもの事態に備えてほしい。


損害保険とは?

平穏に生活が送れるなら問題ないが、アクシデントのない人生を送ることができるかは誰にも分からない。だが、損害保険をかけておくなら、思わぬアクシデントに巻き込まれ、予想を超える出費が必要になったとしても、保障内のトラブルや金額ならスムーズな支払いが可能になる。

手術の種類や入院日数で一定額の保険金が支払われる医療保険や、死亡したかどうか、体に障害が残ったかどうかで一定の保険金が支払われる生命保険とは異なり、損害保険は、基本的に、限度額は決まってはいるものの損害を受けた額だけ保険金が支払われる実損払方式となっている。

保険料はどう決まる?

旅行保険や対物保険などの万人に同じだけのリスクが考えられる損害保険については、保険料は補償限度額の大きさによって決まってくる。だが、自動車保険や住宅保険などの人や環境によってリスクが異なると考えられる損害保険については、保険料は補償限度額の大きさだけでなく、自動車に乗る人の属性や住宅の立地、建物の材質などによって変わってくる。

一見不公平に思えるかもしれないが、これは極めて公平な仕組みと言える。もし、自動車保険が補償限度額の大きさだけで決まるなら、普段、車に乗らない人や近場の慣れた道しか行かない人も、過去に何度も事故を起こしている人と同じだけの保険料を支払わなくてはならないことになる。事故を起こすリスクが低い人にとっては、決して安くはない保険料を事故を起こすリスクが高い人のために支払っていることになり、不公平に感じるだろう。

また、事故を起こすリスクが低い人は、割高な保険料を毎月支払う必要性はないと考えるかもしれない。そのように考える人が自動車保険の中でももっとも低額なものを選ぶなら、保険料が集まらず、加入者個人個人が支払う保険料の負担は大きくなり、事故を起こすリスクが高い人の保険料はさらに高くなるだろう。つまり、リスクの大きさで保険料にバイアスを掛けることは、リスクが高い人はもちろん、リスクが低い人にも公平な仕組みと言えるのだ。

個人向け損害保険の種類

個人向けの損害保険にはどのようなものがあるだろうか。いくつかの代表的なものを紹介する。

自動車保険

自動車で事故を起こした際、運転者や同乗者、第三者に被害を与える可能性がある。また、人だけでなく建物や車などの物的損害もあるだろう。そのような被害に対して備えるのが自動車保険だ。自動車保険は、自動車や原動機付自転車を保有する人全てに加入が義務付けられているが、保険によって補償内容や補償額は異なる。

事故を起こした場合の賠償金額は昨今ますます高額化しているため、加入が義務となっている自賠責保険だけではカバーしきれないことが多い。高額賠償にも対応できるよう、任意保険にも加入しておく方が良いだろう。

住宅保険

火災や地震などの災害で建物や家財に被害が起こったときに備えるのが住宅保険だ。火災保険が一般的だが、火災保険だけに掛けておくと、地震が起こって二次的に火災が起こった場合には補償されない。そのため、火災保険だけでなく地震保険もかけておく必要がある。また、津波による被害も火災保険だけではカバーされないため、地震保険に加入しておく必要が生じる。

傷害保険

医療保険では事故や何らかのアクシデントによる入院や通院、死亡は補償されないことが多い。傷害保険に加入しておくなら、そのような不慮の怪我やトラブルにも備えることができる。また、傷害保険によっては、誤って物損したり人に怪我を負わせたりした場合にも保険金を受けることができる。子どもからお年寄りまで、家族全てに必要な保険だと言えるだろう。

旅行保険

海外旅行中の怪我や病気、国内旅行中の事故や持ち物の破損などに備えるのが旅行保険だ。特約で手荷物の盗難や第三者への賠償にも対応することができる。海外滞在中に事故や病気で入院・通院する場合、日本の医療保険は適用されないため、実費で支払うことになる。例えば、アメリカで盲腸の手術を受けるだけでも、入院費を含め200万円前後の費用がかかることになる。もしものための旅行保険は、特に海外に行く場合は必須と言えるだろう。

法人向け損害保険の種類

保険が必要となるのは個人だけではない。事業活動を行うに際して、法人にも損害保険が必要となる。法人向けの保険をいくつか紹介しよう。

財産保険

火災などの災害による企業財産の損害を補償する財産保険は、決して安くはない建物や機材を持つ企業にとってはなくてはならない保険と言える。災害により休業を余儀なくされたときの利益の損失もカバーするタイプもある。

賠償保険

第三者に怪我を負わせたり、製造商品で顧客が被害を受けたりしたときに補償してくれるのが賠償保険だ。対物や対人など、製造・販売する企業には予測もつかないような幅広いリスクに対応してくれる。

貨物保険

運送中の破損や保管中の破損などの被害に対応してくれるのが貨物保険だ。国内だけでなく海外への運送や海外からの運送、海外における保管中の破損等のトラブルに対応するタイプもある。

損害保険契約時の注意点

補償内容が多彩になればなるほど、補償される金額が大きくなればなるほど、当然のことであるが保険料も高くなってしまう。本当に必要な保険なのか、また、実際に使える保険(適用される条件が厳しく、実際には利用できにくい保険も多々ある)なのかどうか、厳しくチェックすることが必要である。

また、契約時に申告する内容に不備や虚偽があると、保険料を支払っていても保険金がもらえないこともある。正確な情報を記載したかどうか、何度でも確かめる癖をつけておこう。

損害保険を提供している保険会社

損害保険を扱う保険会社をいくつか紹介する。

三井住友海上

個人に向けた自動車保険や住まいの保険、けがの保険。法人に向けた自動車保険や工事の保険、船舶保険、貨物保険、賠償保険だけでなく、事業中止となった場合の利益減少に対応する企業利益総合保険や、偶然の事故によって企画やイベントが中止になったときの興行中止保険など多彩な商品を取り扱う。

損保ジャパン日本興亜

個人に向けては自動車保険や旅行保険、けがに対する保険だけでなく、積み立て型の保険も取り扱う。法人に向けては、従業員向けの保険や経営者向けの保険、海外出張用の保険などきめ細かな設定の保険を多数用意している。

保険はバランスが大事

必要になってからでは加入することができないのが保険だ。どのようなリスクがあるのか、また、どの程度の補償が必要なのかをしっかりと考えてから加入するようにしよう。「備えあれば憂いなし」というのは事実だが、「備えすぎると出費が多い」のも事実である。各自、ちょうど良いバランスを見つけていこう。