逃げ恥,契約結婚,ブラック企業
(写真=PIXTA)

最近人気のTBSドラマ『逃げるは恥でも役に立つ』(逃げ恥)がヒットしている。新垣結衣さん扮する女性主人公の森山みくりは、就職活動に失敗した上に、勤めていた派遣の仕事も失い、父の紹介により、森山は星野源さん扮する男性主人公・津崎平匡(ひらまさ)宅でハウスキーパーとして週1回働くことになる。実家が引越しをするのに伴い、津崎と契約結婚することを思いつき共同生活が始まるというストーリーだ。

ここでは、このドラマのメインテーマである仕事と結婚について見ていくことにしよう。

「仕事」と「結婚」のベースは同じ

津崎と契約結婚する時の森山のつぶやきに注目したい。

「いっそ、結婚という名の永久就職をすれば、この職探しスパイラルから解放されるのか?(第1話)」

改めていうまでもないことだが、「婚活」という言葉が示すように、結婚とは一種の就職と見なすことができる。どちらも仕事や家庭における役割分担を考慮すべきところや、信頼がベースになっているところ、人間関係を維持するためには努力が必要なところなど、共通点が多い。「就職=結婚」「転職=再婚」「リストラ、退職=離婚」というように考えるとわかりやすいだろう。

「仕事」と「結婚」のブラックゾーン

ドラマの中で、森山と契約結婚をする津崎は、かつて自身がブラック企業に勤め、苦労した経験から、森山との間にきめ細かい就業規則を取り決め、自分はブラック企業になるまいと努力する。

これは、現実社会のブラック企業に対するアンチテーゼとも取れるが、実際、世間には表面化していない多くのブラック企業が存在していると思われる。だからといって、基準外の会社のすべてがダメなのかといえば、そうとばかりもいえず、中には起業したばかりの会社や家族経営、少数精鋭の会社など、それぞれの事情があるのだろう。

たとえ基準に達していない会社であっても、そこで働くのが好きな従業員や、「その会社で成長したい」といった理由で戦略的に働いている者も大勢いる。結局のところ、法律とはどうしても後付けになるのは止むを得ないことであるし、100%法律で完璧に網羅することもできない。大切なのは、辛いと感じる人や、それを望まない人を救える仕組みをつくることである。

会社で働くにしても家で働くにしても、お互いが納得しているかどうかが大事であり、許容範囲を超えた段階で「ブラック化」するということなのである。そういう意味では「ホワイト企業」や「ブラック企業」に境界線があるというよりは、世の多くは「グレー企業」ということなのだろう。