まずはスタートダッシュ。それから「流す」のが鉄則
時間を効率的に使うために、中島氏が重視しているのが「緩急をつける」ことだ。
「朝の最初の2時間に集中して仕事をして、その日にやる仕事の8割を終わらせてしまう。そして、あとは『流す』のです。
流すといっても、仕事をしないわけではありませんよ。メールに返信をしたり、目の前の仕事に優先順位をつけたりという、集中しなくてもできる仕事をしています。今やっている仕事について、『なぜ、この仕事は必要なのか?』と一歩下がって考えることもしています。これが大事なポイントです。目の前の仕事を次々とこなしていくだけで、仕事の全体像を考える時間がなくなっている人が多いからです。仕事の全体像を捉えられていないから、目の前の仕事に追われてしまうのです」
1日の中だけでなく、中長期的な緩急をつけることも大事だ。
「締切りまでに10日間ある仕事を与えられたとしましょう。本当に10日で終わるどうかは、やってみないとわからないものです。そこで重要なのが、最初の2日で目処をつけることです。
2日間全力で取り組んで、8割方終わったら、『10日あれば最後まで終わる』と判断できます。しかし、もし2日間全力で取り組んでも8割に届かなければ、10日あっても終わらないと判断するべき。その時点で期限の延長などを申し出ましょう。
ところが、多くの人は最後の2日になってやっと取りかかって、『終わりませんでした』ということになるのです」
多くのビジネスマンにとって耳の痛い話ではないだろうか。緩急がつけられず、日々の仕事でアップアップの状態の人が、中島氏のような仕事のスタイルを身につけるためは、どこから手をつけたらいいのだろうか。
「まずは会社に早く来てみてはいかがでしょうか。9時始業なら、7時に出社する。そして、誰にも邪魔されない環境で、大事な仕事を2時間集中してやるのです。9時に他の人が出社してからは『流す』。
これをやっていると、だんだん仕事が効率化していき、5時に帰れるようになるでしょう。実際に5時に帰るのには勇気が必要でしょうが、成果を上げていれば帰りやすいはず。だからこそ、7時から集中して仕事をして、成果を上げることです」
そのうえで、より根本的な働き方の自己改革も必要だ。
「効率的に仕事をこなす方法を工夫しても、イヤな仕事では長続きしません。自分の得意な仕事、やりたい仕事を見つけるために、いろいろなことに手を出すことも大事です。得意な仕事には積極的に手を挙げて、そうでない仕事は断わるようにするべきだと思います」
得意なことを見つける時期は、若手のうちだけに限らない。
「私自身、起業をしたときにはあらゆる仕事をしなければならなくなりましたから、その中から、改めて自分が得意なことを探すことになりました。
会社の中で昇進しても同じだと思います。『部長』とひと言で言っても、その人なりのスタイルがあるはずです。部長の仕事の中から、自分が得意なことを見つけることが大事。そして、苦手なことは素直に他の人に頼めるようになると、成果が上がるようになります」
中島 聡(なかじま・さとし)UIEvolution CEO
1960年、北海道生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。高校時代から『週刊アスキー』において記事執筆やソフトウェアの開発に携わり、大学時代には世界初のパソコン用CADソフト『CANDY』を開発。85年、NTTの研究所に入所。86年、マイクロソフトの日本法人に転職。89年、米国マイクロソフト本社に移り、ビル・ゲイツの薫陶を受ける。Windows95、InternetExplorer3.0/4.0、Windows98のソフトウェア・アーキテクトを務め、マイクロソフトのブラウザのシェアを世界一にするなどの大きな成果を上げた。2000年、米国マイクロソフトを退社し、ソフトウェア会社のUIEvolutionを設立してCEOに就任、現在に至る。(取材・構成:川端隆人 写真撮影:長谷川博一)(『
The 21 online
』2016年12月号より)
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