中国のネットニュース・騰訊新聞は、経済サイト慧眼財経網による日本経済、韓国経済の分析記事を連続して掲載した。上から目線や自信過剰は明らかで、特に韓国には宗主国のような見下しようである。中国では常に思惑がつきまとい、純粋な民間評論は難しい。しかしこれら記事の分析は中国政策の参考にもなるだろう。
【あわせて読みたい】
・「年100万」を手元に残す「お金の貯めワザ」全12選
日本経済の見立て
アジアにおいて、中国と日本はよく対比され一緒に語られることは多い。日本はアジアで希少な高度発達国家として、中国はアジア最大の経済体として。日本経済が逐次、衰退しているのは事実である。これに対し中国経済の迅速な発展は鮮明で、好対照を見せている。少なからぬ中国人は、我々は“感覚良好”と感じているだろう。
しかしこれには誤解がある。日本だけではなく世界経済全体が低迷している中で、唯一中国だけが突出しているからだ。中国は改革開放30年の発展で、すでにかつてのライバル日本を抜き去った。以来、アジア第一の経済大国の称号は我々の下にある。
もはや我々は完全に日本を超越したという議論もある。しかしこれは本当だろうか。実は中国と日本の経済には、まだ一段の差があるのだ。それは一人当たりの比較にある。1人の典型的日本人と同じく典型的中国人を比べると、その富裕は10倍である。また1人の典型的工場労働者同士の比較でも、その差は5倍である。
日本は第二次大戦後の経済拡張を実現するため、長期にわたる企業減税と国内資本の輸出を奨励してきた。2015年、日本の海外資産はすでに10兆米ドルに接近し、国内GDPの2倍、中国のGDPの80%に相当する。とくに先端産業領域においては、中国はまだ対抗できないでいる。日本は家電など低付加価値製造業をあきらめ、資源再利用型の新興先端産業への転換を全力で図った。我々はその技術を利用するために、巨額の権利使用権を支払わねばならない。
2016年、日本の一人当たりGDPは4万米ドルに迫る。世界最高水準である。ところが日本経済はいわゆる“低迷”状態にある、と言われている。日本脅威論や日本特殊論を奏でることで、日本から中国への先端技術の移転を妨げてはならない。
韓国経済の見立て
韓国経済は多事多難な秋に突入している。韓国経済はすでに底入れした、と言えるのだろうか。ミサイル防衛システムTHAADの導入決定以来、中韓関係は微妙な状況に陥っている。最近では中国のテレビ番組では、韓国スターの顔にモザイクがかけらかれた、という報道もある。何らかの制限がかかっているようである。正式な文書は発せられてはいないものの、この状況は韓国を大いに慌てさせている。エンタメ関連企業の株価は大暴落、株式市場も下ぶれが続いている。
韓国経済は、娯楽産業への依存が強い。観光産業とIT産業が経済の大きな支柱である。そして財閥による経済でもある。最近三大財閥は似たような緊急事態に遭遇している。ロッテ副会長の自殺、サムスンギャラクシー7の発火、韓進海運の破たん、それぞれ程度は違えど韓国経済に大きな影響をもたらしている。このうちの2社は際限のない内戦状態とされ、韓国経済は10年後退するとも言われている。おまけに朴槿恵大統領は市民からの辞任圧力にさらされている。
ところで中国は韓国経済に“多少”の貢献をしている。これはお互いにはっきりわかっているだろう。仁義が尽き、中国の援助を失うことになれば、韓国の将来は自ずと知れるであろう。
中国は経済人口大国である。各方面で世界の強国として台頭している。科学技術、農業、工業、それぞれ経済的に天地を覆うばかりの変化をもたらした。中華民族の美徳はすでに光の大きさにまで発揚している。中国はこれまでも再三にわたり無条件で各国を経済援助してきた。その恩恵が受けられるかどうかは韓国次第である。
日本と韓国 対応の差は?
経済サイトの運営者だけに、日本経済の分析については、国民を意識し過ぎた増長気味の表現とはいえ、的を射たものである。日本経済には一目置いている。ところが韓国になると、ほとんど“属国扱い”だ。読者コメントも多様性を欠き「制裁を継続しろ」のようなものばかりである。今週は他に、韓国中央日報記事の紹介や、韓国大使館経済担当公使の会見など、中国側から見れば“言い訳”も掲載している。しかしいずれも上から目線のままである。
現代中国人は自然とこうなってしまうのだ。社会主義革命を経て唯物論を取り入れたため、敵対者や強者に対しては、観念論を排した冷静な分析をすることが可能である。
ところがそれ以外では、“儒教的秩序の頂点にある中国王朝”の遺伝子が顔をのぞかせる。特に同じ儒教圏の韓国には歴史的にもそうなりやすい。実は騰訊新聞は、この韓国経済記事を翌日までに削除した。あまりにも尊大、厚顔で、中韓関係に悪影響、という判断かもしれない。騰訊の自主規制システムが発動したようである。
とにかくこうしたスタンスをよく理解しつつ、中国との交渉には、必ず何らかのアドバンテージを持って臨むのべきである。それを欠けば、いつの間にやら封建的儒教秩序に組み込まれないとも限らない。中国に依存しすぎた韓国の轍を踏んではならない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)