国民年金は満20歳から加入する年金システムだが、満20歳時点で大学生や専門学校生ならば給与所得がないため、保険料を支払っていないことが多い。また、人によっては経済的な事情で支払えなかった時期が、20歳以降60歳未満の期間にあるかもしれない。

そういった場合に利用できるのが、60歳を過ぎても加入できる任意加入制度や、追納(後払い)制度だ。年金受給資格は、保険料を満25年以上(2017年10月以降は満10年)支払うともらえるため、必要最小限を支払っていたならば、未払い分は支払わないという選択をする人もいるかもしれない。だが、年金の未払い分は、追納するほうが断然お得と言える。なぜお得なのか、どのタイミングでお得になるのか、支払うときに気をつけるべきことについて紹介する。

年金の追納とは

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(写真=PIXTA)

その時点で年金を支払えないときは、承認を受けた上で、年金保険料の支払いを免除もしくは猶予してもらうことができる。そして、支払わなかった保険料の追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除などの期間に限られており、原則として古い期間の保険料から支払っていく。

例えば、2015年4月~2017年3月分の未払い期間があるときは、2015年4月分の保険料から順に支払っていくことになる。

また、保険料の免除もしくは納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して2年以内に追納する場合の追納加算額はないが、3年目以降に追納する場合には経過期間に応じて追納加算額を支払わなくてはならない。ゆえに、追納分をお得に支払いたい場合は、早めの追納がおすすめだ。

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なぜ年金の追納がおすすめなの?

受給資格期間を満たしていない場合は、年金支払い期間を65歳まで(1965年4月以前生まれの人は65歳から70歳未満)延長してもらって保険料を支払うことで、満期分の年金を受け取ることも可能だ。ただ、その年齢になったときに保険料を支払う余裕があるかどうかは分からないので、追納がもっとも現実的な年金未納期間を埋める方法だと言える。

追納をおすすめする理由は、他にも2つある。

1.将来の年金受給額が増える

国民年金は収入にかかわらず月額が決まっているため、年金受給時期になって受け取れる年金額(年額)は、いくつかの例外はあるものの、基本的には支払った月数によって決まる。つまり、支払った月数が多いほど多くの年金を受け取れるのだ。ちなみに満額は2016年4月時点で78万100円。満期は40年(480か月)なので、1カ月支払い漏れがあると

78万100円÷480=約1625円

受け取り額が年間約1625円減ることになる。もし、2年間(24カ月)支払い漏れがあるならば、

78万100円×(480-24)÷480=74万1095円

74万1095円しか受け取れない。2年間の支払い漏れがあることで、受け取り額が年間3万9005円減ってしまうのだ。

75歳まで生きるとするならば、3万9005円×10=39万50円
80歳まで生きるとするならば、3万9005円×15=58万5075円
85歳まで生きるとするならば、3万9005円×20=78万100円

長生きすればするほど、受け取れない金額が増えてしまう。2015年4月~2017年3月分の未払い分を、追納加算額を支払わなくてよい期間内に支払うとすると、追納額は37万80円となる。つまり、追納することで増える年金受給額よりも少ないのだ。75歳までしか受け取れないとしても、追納したほうがお得だと言える。

2.保険料控除によって税金が還付される

国民年金は社会保険料に該当するため、支払った額の社会保険料の控除が受けられ、所得税や住民税が軽減される。給与から各税金が源泉徴収されている場合は、翌年に確定申告することで過払い分の還付を受けられる。また、住民税を自分で支払っている場合は、5月ごろに自宅に送付される納付書に、国民年金追納によって控除された分が反映された額が記載されることになる。

追納で所得控除される金額はいくらか

将来的に受け取る年金額が増えるだけでも十分にお得だと言える追納制度。追納した分の保険料控除を受ければ遠い将来だけでなく、支払った翌年にもお得感を実感できる。日本年金機構によると課税所得金額が300万円の人の場合、国民年金追納額(2015年4月~2017年3月分の場合は37万80円)全額が控除の対象になり、所得税と住民税で合わせて約8万円が軽減されることになる。

具体的な手続き方法

年金事務所で追納の申し込みをすれば、厚生労働大臣の承認を受けた上で、追納専用の納付書を渡してくれる。追納分は通常の年金保険料のように口座振替が利用できないので、必ず専用の納付書で納付する。

追納タイミングも重要

年金保険料を追納すると、将来的にだけでなく、追納した翌年にも恩恵を受けることができる。ただし、所得税も住民税も、確定申告をしなければ還付を受けることができないので、忘れずに確定申告をするようにしよう。

なお、社会人1年目は課税所得金額が300万円に満たないことも多い。学生時代の未納分が2年分あるときは、社会人2年目にまとめて支払うか、社会人1年目と2年目に1年分ずつ払うほうが賢いと言える。余裕のある老後を送るためにも、追納制度をしっかりと活用したい。(ZUU online 編集部)

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