要旨

新規顧客を誘引したり、既存顧客を囲い込む手段として、購入履歴などにもとづき、割引サービスなど、対価性を持ち合わせたポイントプログラムを実施する事業者が増えてきている。

小売、クレジット、航空、通信など、さまざまな業種がポイントサービスを提供しており、最近は、銀行や保険など金融業界の一部にもポイントが導入されている。

さらに業態を超えた各ポイント間の互換性など、ポイントプログラムの進化が進み、企業に加え地方自治体などでも活用されるなど、社会的なインフラとして定着している。

こうしたポイントプログラムの現状やこれまでの検討経緯、課題と対応方向などを示したい。

はじめに

新規顧客を誘引したり、既存顧客を囲い込む手段として、購入履歴などにもとづき、割引サービスなど、対価性を持ち合わせたポイントプログラムを実施する事業者が増えてきている。

小売、クレジット、航空、通信など、さまざまな業種がポイントサービスを提供しており、中には「ポイントサービスが有利であるからこの事業者を選択した」とする消費者も少なくない。

実は、筆者もその1人であり、「当カードに加入すると商品・サービスと交換できる○○○ポイント進呈、その上年間手数料も無料」といった誘引により、別のカードを解約して、あるカードに加入した経験がある。

こうしたポイントプログラムは、本体である商品・サービスに付随する、対価性を有しない、単純な「おまけ」として一切保護されないのであろうか。

「おまけ」と考えれば、たとえば突然ポイントプログラムが廃止された場合や、ポイントカードを紛失した場合などでも、消費者に対する保護は弱くなりがちとなる。

しかしながら、ポイントプログロムは、本体である商品・サービス加入の際、重要な加入動機となっているケースも多く、消費者の期待も大きいことから、消費者保護のための方策が必要である。

商品・サービスと交換できる点でポイントプログラムと類似している商品券、ギフト券、プリペイドカードなどは、資金決済法上の「前払式支払手段」とされ、消費者保護のため、事業者に対し、発行額の2分の1以上の保証金供託義務などが課されているが、ポイントプログラムについては対価性がなく、無償で発行されているとして、こうした義務は課されていない。

主要企業のポイント発行額は2014年で8495億円で、2022年には約1兆1千億円に達するとの予測もある中、社会的に定着したポイントプログラムの現状やこれまでの検討経緯、課題と対応方向などを分析したい。