名探偵コナン,日本アニメ,中国
(写真=PIXTA)

中国でドラマといえばドロドロした愛憎劇ばかりである。現代、抗日戦争、古代王朝と舞台は違っても、どれもみな女が男につかみかかっていくイメージだ。同じ路線の延長だが、韓流ドラマはそれに色彩感とスピード感を付加した。そのヴィジュアルとテンポのよさは、多くの中国人女性をとりこにした。一方で中国人には、推理もの志向はあまりなく、それ一色の日本ドラマは面白くないようだ。現実に起きる犯罪の方が創作より傑作だから、ということはありえる。

中国で人気の日本のコンテンツは、ドラマではなくアニメである。そしてその中心はオリジナリティーにあふれたキャラクターの存在にある。

名探偵コナン人気の秘密

あるサイトにまとまっていた中国人の好きな日本アニメキャラクターのランキングは、1 江戸川コナン(名探偵コナン)、2 藤原佐為(ヒカルの碁)、3 桜木花道(スラムダンク)、4 エドワード・エルリック(鋼の錬金術師)、5 不二周介(テニスの王子様)となっている。

ネット辞書「百度知道」で、名探偵柯南(コナン)を見ると、その分量と内容の豊富さにおいて、日本語ウィキぺディアの比ではない。日本版、台湾版、中国本土版、香港版、それぞれていねいな解説を加え、声優の名前まですべて挙げている。さらにテレビ版の題名を1996年の第1集から今年12月の第844集まで、5ページにわたり記載している。

閲覧回数は12月13日現在で5324万2913回にも及ぶ。2位の棋魂(ヒカルの碁)は279万5117回、3位の灌藍高手(スラムダンク)926万9314回、ちなみに知名度が高いと思われたポケモンは82万1294回だった。

街には“柯南探偵社”という広告が目につき、探偵事務所の代名詞にもなっている。なぜ柯南(コナン)はこれほど人気が高いのだろうか。

まずネットから探ってみた。

・一話ごとに日本人が一人死ぬから。これはいろいろなサイトに転載され、最も受けている皮肉コメントだ。
・柯南より知能の高い中国人はいるか?諸葛亮ならいけるんじゃないか。
・中国自国制作のアニメを見る人は少ない。中国には園児向けしかないから。
・柯南は中国人に見えるなあ。

またネット上では第何集に中国人が登場している、など個別作品をさかなにした議論が盛んだ。

実際に10代後半〜20代の人に聞いてみると

・過程が面白い。ストーリー展開が優れている。
・キャラクターが好き。

に集約される。実際には中国人もよくわからず説明には困るようだ。

根本的原因は創造力不足にあり

中国人は犯罪者の動機や社会的背景にあまり興味はない。現代中国凶悪犯罪者10傑のサイトを示して、彼らを知っていますかと尋ねたところ、「知らない」と答える人が多かった。日本ではまずあり得ない。中国では犯罪者とは、自分を貫いた挙句、落馬した人たちで、特に異常心理者とは思われていないフシもある。

推理ものは、例えば東野圭吾は読まれているし、TVの「相棒」も知られているが、日本好きサークル内のカテゴリーにとどまる。日本が世界一の圧倒的力量を持つアニメでは、簡単にこの枠を超越できる。ドラマと違いライバルは存在していないからだ。結局中国のコナン人気とは

1 中国の圧倒的なコンテンツ不足
2 日本アニメの圧倒的な表現力
3 作品のキャラクター創造の妙
4 テンポの良いストーリー展開

とまとめるしかない。とにかく中国におけるコナンとは、日本アニメ最大の成功事例である。現実対処に忙しく、自由な創造力を欠く中国人に強くアピールした。今後も新しい作品で、どんどん中国市場へ攻め込むべきである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)