失業保険(失業給付)は職を失った人がもらえるものである。だが、同じ期間、同じ給与を得ていたとしても、離職した理由によっては受け取れる額が大きく変わってくるのだ。どのような理由で離職すると失業保険を多く受け取ることができるのか、どのような手続きが必要となるのかについて解説する。

目次

  1. 失業保険における会社都合・自己都合の違いとは
    1. 会社都合とは
    2. 自己都合とは
  2. 退職理由と給付期間との関係
    1. 自己都合離職者の給付期間
  3. 会社都合に該当する離職理由
  4. 会社都合であることを証明するには
  5. 失業保険受給額は離職の理由によって大きく異なる

失業保険における会社都合・自己都合の違いとは

離職にはいろいろな理由が考えられるが、会社都合で離職すると受け取る失業保険の総額が多くなることがある。一方、自己都合で離職すると、会社都合に比べて失業保険の給付期間は長くなく、給付の開始時期も遅くなることが多い。

会社都合とは

会社の都合によって離職せざるを得なくなったときを、会社都合による離職という。

自己都合とは

一方、自己都合とは、自分の都合で離職した場合をいう。次の特定理由に該当する場合は、自己都合であっても「特定理由離職者」とされ、一般的な自己都合による離職と比べて手厚く失業保険を受給することができる。

例えば、期限の定まった雇用契約で期限を迎え、働くひとが契約更新を希望したにもかかわらず、会社側の合意がなく契約更新できなかった場合の他、体力の問題や、身体的な理由によって離職した場合、また、妊娠・出産・育児のために離職し、受給期間の延長措置を受けた場合などが該当する。

また、親の死亡や介護・扶養など、家族の事情が急変したために離職した場合や、配偶者や扶養家族と別居生活を続けることが困難になり離職した場合結婚による引っ越しや会社の移転、通勤路線の廃止などによって通勤が困難になり離職した場合も含まれる。

その他、人員整理などで希望退職者の募集に応じて離職した場合にも、特定理由離職者の扱いとなる。

退職理由と給付期間との関係

失業保険は、ハローワークで求職の申し込みを行った日から7日間の待機期間が終了すると給付開始となるが、特定理由離職者以外の、離職者自身に重大な過失があって解雇された場合も含む自己都合離職者は、待機期間終了後さらに給付制限があり、3カ月間は失業保険を受け取ることができない。

自己都合離職者の給付期間

特定理由離職者以外の自己都合離職者は、給付開始時期が遅れるだけでなく、会社都合に比べて給付期間も短くなる。

雇用保険加入期間が1年未満の場合、会社都合で離職すると失業保険の給付日数は90日であるが、自己都合離職者は給付されない。

同期間が1年以上5年未満の場合、会社都合で離職すると給付日数は年齢によって90日~180日であるが、自己都合離職者は年齢にかかわらず90日。

同期間が5年以上10年未満の場合、会社都合で離職すると給付日数は年齢によって120日~240日であるが、自己都合離職者は年齢にかかわらず90日。

同期間が10年以上20年未満の場合、会社都合で離職すると給付日数は年齢によって180日~270日であるが、自己都合離職者は年齢にかかわらず120日。

同期間が20年以上の場合、会社都合で離職すると給付日数は年齢によって240日~330日であるが、自己都合離職者は年齢にかかわらず150日。

会社都合に該当する離職理由

会社都合による離職理由として、次のような事例が挙げられる。

例えば、事業所が倒産した、事業所で1カ月に30人以上の大量雇用変動の届け出がなされて離職に至った、事業所が移転し、通勤が困難となったために離職した、特に離職者自身に重大な過失があったわけでもないのに解雇された、といった、離職の原因が会社都合によるものだ。

また、賃金の3分の1を超える額が支払い日までに払われない月が2カ月以上になったり、賃金が予告なしに85%未満に低下したり、1カ月に100時間を超える時間外労働があったことや、上司や同僚による著しいいやがらせ、事業所の業務が法令に違反していたことを理由に離職した、という場合も会社都合の離職理由として認められる。

会社都合であることを証明するには

会社都合で離職すると、給付期間が長くなり、その分受け取れる失業保険も多くなる。会社都合で離職したことを会社が証明してくれる場合や倒産などの客観的事実がある場合は問題ないが、会社からいやがらせを受けて離職したときなど、離職者の主張する離職理由と事業所の主張する離職理由が異なるときもあるだろう。

そのようなときは、会社都合で離職したことを証明できる客観的な資料を集めることで、ハローワークに判定を委ねることができる。ハローワークは事業所の一方的な主張だけに耳を傾けるというようなことはしないので、根拠となる資料を集めて提出しよう。

失業保険受給額は離職の理由によって大きく異なる

失業保険の基本手当日額は離職前に受け取っていた賃金によって決まり、すぐに再就職先が決まらなければ、給付期間が長ければ長いほど多くの失業保険を受け取ることができる。

どのような理由で離職したのかということが給付期間にダイレクトに影響を与えるので、もし納得できない理由を離職証明書に記載されたときは、ハローワークに早めに相談するようにしたい。