贈与,契約書
(写真=Thinkstock/Getty Images)

相続税の節税を目的として生前贈与を行う人は多いが、その贈与に関して契約書は残しているだろうか。贈与契約書を残さず、もしもこれが生前贈与として認められなかった場合、せっかくの相続税対策も意味をなさなくなってしまう。今回は、なぜ生前贈与に際して贈与契約書を書かなければならないのかを解説すると共に、その他の対処法についても紹介する。生前贈与を検討している方は、ぜひこれを確認してほしい。


贈与税とは?

贈与税は、個人からの贈与によって財産を取得した者に対して、その取得財産の価額を基に課される税金である。贈与税はその性質上、相続税とは全く異なる税金でありながら、相続税法において規定がなされている。これは、贈与税が相続税を補完する機能を有していることが理由だ。

贈与税の課税方式は、その持つ機能が相続税の補完機能であることから、相続税の課税方式に準じて決められている。具体的には、贈与をした人(贈与者)ではなく贈与を受けた人(受贈者)に課税される受贈者課税方式を採用している。

贈与税にせよ相続税にせよ、受け取った人が税金を支払うものである、という大前提をまず理解しよう。なお贈与税には、暦年課税制度と相続時精算課税制度という2つの課税制度がある。

暦年贈与とは?

暦年課税制度に基づく贈与を暦年贈与と呼び、特に申告や選択のなされなかった贈与はすべてこれに含まれることとなる。暦年贈与には年間110万円の基礎控除が設けられているため、この控除枠を長期的・計画的な生前贈与を実現させるときに利用する人が多い。

相続時精算課税制度と比べると控除枠が小さいため短期的な生前贈与には向かないものの、暦年課税制度の基礎控除は特に要件による制限等もなく活用することができるため、一般に行われる生前贈与の手段としてはもっともポピュラーと言えるだろう。

だが暦年贈与によって行われた贈与は、贈与であったと認められないケースがしばしば存在する。

暦年贈与では契約書を書いておくべき。その理由とは?

例えば親が子のために預金口座を用意し、そこへ毎年110万円以内の入金を行っていたとする。だが通帳や印鑑を親が所持し、その口座を実質的に親が管理してしまっていた場合、子に通帳や印鑑が渡されるまでの間に行われた贈与はなかったものとして、その時点で一括の贈与が行われたものとみなされてしまう。これはたとえ口座の名義が子のものだったとしても同様だ。

これは預金口座を利用した暦年贈与に限らず、あらゆる分割贈与に関して同じことが言える。こうした手法は暦年贈与として良く見られるものでありながら、同時に暦年贈与として認められない最たるものと言えるだろう。

つまり、手続き上は受贈者へ財産が渡っていたとしても、その管理を変わらず贈与者が行っていたのであれば税法上は財産の移動はなされていないと見なされるのだ。これを避ける方法としては、前述した例で言えば口座の通帳や印鑑を子に持たせることなどが挙げられるが、より万全を期すならば贈与契約書を用意するべきだろう。

贈与契約書とは

その時点で贈与があったことを証明する書類、あるいはその時点で贈与が行われることを契約する書類を贈与契約書と呼ぶ。十分な情報の記載がなされた贈与契約書さえあれば、その贈与が否認される可能性は低くなる。

贈与契約書に記載すべき十分な情報とは、次のような事項だ。

・贈与日時

・贈与者と受贈者の氏名や住所

・贈与される財産の価額や所在

・贈与する条件

・贈与する方法

ここで特に重視されるのは、贈与日時や贈与される財産の価額である。契約書の日付を証明する方法としては、公証役場において確定日付を決定してもらうという方法がある。逆に言えば、この確定日付がない契約書は過去あるいは将来的な日付について記載されている可能性があるため、その時点で確かに贈与があったことを判断する上では十分なものとは言えなくなってしまう。

一方で、贈与される財産の価額は必要がない限り記載しない方が良い。これは特に不動産などの固定資産を贈与する場合に重要で、記載された価額によって別途費用が発生することになる。

具体的には、不動産などを贈与する契約書には200円の収入印紙を貼付する必要があるのだが、これは価額の記載がない場合や記載された価額が僅かである場合などに限られる。記載された価額によっては200円の収入印紙では不足してしまうのだ。

贈与契約書は暦年贈与を正しく実現させるためにも用意されるべき書類だが、贈与契約書の有無は相続が開始した際の遺産分割協議などにおいても非常に有効だ。まだまだ相続など発生しそうにないという方こそ、将来的に起こるトラブルに備え、贈与契約書を用意することが重要なのではないだろうか。