成人式の三十歳版「三十路祭り」。近年、20歳と同じように30歳を祝おうというイベントが全国で行われるようになり各地で盛況を博している。
特に、来年1月に東京で開催される「三十路祭り」は、他にはない規模の大きさと、高い目標意識を持っている。目指すは成人式同様の国民行事化。
「三十代をどう生きたかで人生は決まる」
毎年全国の自治体で行われている成人式にどういうイメージを持たれているだろう。毎年ニュースで繰り返し報道される「荒れる新成人」の姿に、眉をしかめている人も多いのではないだろうか。
そもそも成人式は、戦後まもない1946年に、埼玉県の蕨市で行われたのが最初と言われている。
「戦後、日本に元気が無くなっている時に『日本に活気をもたらし復興へと導くのは若者だ!』という思いから青年達が自ら立ち上がり成人式は始まったんです。それが多くの人の共感を集めて、全国に広がっていったんです」と、MISOJIMATSURI 1986-1987実行委員会代表のはるかさんは語る。
以後、「新成人が大人になったことを自覚するための行事」として成人式は国民行事化。
しかし、そんな意義で始められた成人式だったが、近年では参加者の意識は変化して、最近の調査では「友達が再会する『同窓会』のような」意識で参加する者が三割以上を占め(横浜市教育委員会調べ)、結果、これから成人を迎える高校生たちからは「内容に興味がない」「参加したくない」という意見が多く聞かれるようになっている(同調べ)。
「二十歳でやる成人式は、まだまだ実社会に足を踏み入れたばかりの、年齢としては『成人』の集まり。けれど、成人式の後は還暦まで周囲から祝ってもらえる機会って無いんです。
だからこそ、社会を経験して、人生の難しさや楽しさを知って『社会的成人』となった三十歳の節目にもう一度集まって、ひと区切りしてもらう。自分の二十代を見つめ直して、これからの三十代をどう生きるかを考える。
どうしたらもっと幸せになれるか、どうしたら人を幸せにできるか、そのヒントが見つかる場にしたいです。そうすれば日本の三十代の人生はもっと充実するのではないでしょうか」(はるか代表、以下同)
そう話す運営団体の代表のはるかさんは、自身も勿論三十歳。彼女がこの役割を引き受けたのは今年の夏だった。
「三十路祭りの運営委員は毎年、三十歳になるその代のメンバーに入れ替わります。来年はこの人にやってもらおう、とバトンタッチしていくんです。私も1学年上のあるメンバーに紹介されて加わりました。
現在約70名になった運営メンバーも同じように、そのほとんどが紹介で集まってきています。本格的にメンバーが増えてきたのも今年の6月以降のことです。
最近では、『三十路祭り公式ホームページ』を見て『ぜひ実行委員をやりたい』と参加してくれる三十歳もいます。私たちの思いへの共感の輪が広がっていることをとても嬉しく思います。全く面識のない三十路が集結する。各々のバックグラウンドが異なるからこそ、『三十路祭り』は進んでいけるんです。
社会人としての職業経験があるから専門技術やノウハウを活かせる。例えば、映像制作の会社をやっているメンバーがCMを作ったり、広告代理店で働いているメンバーがスポンサーを募ったりしています。
また、人生経験の中で培ったそれぞれ独自のコミュニケーションの図り方や思考の仕方があり、それが組織運営で重要な役割を果たす。本当にみんな多彩です。
唯一の共通点は、年齢が同じ三十歳ということ。ただイベントを成功させたいという一心でやっています。先週も朝までファミレスでミーティングしていましたよ(笑)」(はるか代表)
北は北海道から南は九州まで、生まれたところは違えども、今は同じように関東で仕事をしている同年代が集まる。実行委員もそうだが、三十路祭りはそんな様々な人が「同じ歳」という共通点で集まる、そのこと自体に価値がある、とはるか代表は言う。
「同じ会社に勤めていたり、飲み会で知り合ったり、出会いは色々あると思うのですが、ピッタリ同年齢が出会うことって珍しいですよね。同年齢なら、共通で楽しめる話題があって、同時に、三十歳ならではの共通の悩みを持っている。互いに共感できるポイントがとても多いと思います。
三十年間の人生で得た幸せや楽しみを分かち合う。さらに仕事やプライベートの悩みも共有し、解決の糸口を見つける。そしてさらに前を向いて進む。そのために同じ年齢を集合させるんです」