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武田の計算は「高値」つかみと批判と呼ばわりも

武田は過去に高値で買収してしまったのではないかと言われる案件があります。2008年、88億ドル(当時の為替レートで約8800億円)で買収したガン治療薬開発の米ミレニアム・ファーマスーティカルズと、約1兆1200億円でスイス製薬企業を買収した時には、国内史上3位の海外企業買収に「高値」で掴み取らされたのではという声が業界のみならず金融界の間で囁かれていた経緯があったのです。武田はこれらの買収で世界15位から12位に浮上はしたものの、批判をいとわずグローバル化を進める武田経営陣に向けて、「買収価格は、適正価格をはるかに超えていた」という評価は実は今も変わっていないのです。

これらの買収で武田はこれまでの弱点を相当に補強できると見栄を切ったのですが、武田にとってナイコメッドのような欧州製薬企業の買収は果たして良かったのであろうか。確かに営業面で見れば地域補完が見込めます。ナイコメッドは欧州及び新興国市場に向けて、武田側は日米市場に偏っていた販売が是正できました。これにより、武田の販売地域は世界28カ国から70カ国に拡大し成長率の高い新興国市場に参入を果たすことができた点で評価出来たといえます。あと数年で特許切れとなる主力薬も相次ぐという頭の痛い経営問題にもこれで少しは一定の成果を上げることができましたし、ナイコメッドが持つCOPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬「ダクサス」といった期待できる新薬を獲得したことは大きいと見ておりました。

それにも関わらず、格付け会社は「格下げ方向」に動いているのは、やはり買収にあたって8700億円という潤沢な手元資金を取り崩し、約6000億円を借り入れたことにあります。武田は「買収価格は妥当」と主張するものの、想定通りにシナジーを発揮できるかは未知数ですし、「高値」で掴まされてしまったのではと言う声は根強くあったのです。


武田の驚愕人事によるグローバルな舵取り

日本企業は外国人社長が誕生するのは今では珍しいことではありませんが、武田の場合は少し様子が違っています。創業から230年以上の歴史があり、これまで一族支配だった老舗企業だったのは良いとしても、突然のライバルメーカーから外国社長を据えたのですから当時は驚きでした。

更に織り込み済み事項の中には、2014年6月に英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)のクリストフ・ウェバー氏(47歳)が社長兼最高執行責任者(COO)に就任する約束となっておりますし、2015年には最高経営責任者(CEO)に昇格する人事まで決まっているのです。このあまりにも強引で性急な人事に不信感を募らせる社内の者も多いなかで、武田が批判もいとわず構築してきたグローバル経営体制の真価がこれから問われます。