武田は海外M&Aをどう生かす

武田が2012年3月末に保有していた現金(同等物含む)は4542億円。それ以前には1兆6000億円以上あったもですが、単純にM&A後は1兆円以上も手持現金が減少したことになります。アメリカとスイスの大手製薬会社2社の買収にそれぞれ1兆円前後の資金を投じたわけですから当たり前です。更に、12年春にも600億円強の費用をかけて米国の製薬会社を買収しております。実はこのような光景は珍しいことではなく国内製薬メーカーでは各社で行われております。参考までに挙げてみますと、大日本住友製薬が米国医薬品会社、塩野義製薬が中国製薬会社、大正製薬HDがマレーシアの医薬品メーカー、参天製薬がフランスの眼科系製薬会社といったところが買収劇をしているのです。

この背景には、医療用医薬大手各社の売上高営業利益率は10〜20%と儲ける仕組みが出来上がっているからです。つまりは1000円の薬を販売すると100〜200円の営業利益を確保することができているからなのです。薬は市販の製品よりも病院に収める厚生省が決めた価格設定で収める製品のほうが半分以上もありますので、製薬会社はいわば厚生省の下請け会社といっても過言ではない実態があるのです。そこで、儲ける力を背景に財務体質が健全なことからM&Aにも積極的になれるというわけです。後は各社とも投資に見合う純利益をどれだけ確保出来るかですから、実はオイシイ商売をしているのが製薬メーカーの実態なのです。

話を戻しますが、武田の海外事業比率は今や5割超、従業員は全世界に2万人以上とされており、その中で日本人従業員は9000人ですから、半分以上が外国人従業員でで成り立っている会社なのです。今後、武田は2017年度までに全世界で1000人規模のリストラを計画しており、日本の株主の意向に沿いながら企業統治を進めることになります。


既に事前に掲げた目標は達成している

企業経営に国境がなくなったいま、武田の人事を通じて新しいスタンダードが生まれるかもしれません。日産(カルロス・ゴーン氏)・ソニー(ハワード・ストリンガー氏)といった大胆で冷徹なリストラによって業績を回復させるイメージは付きまといますが、いかに企業統治を進めるか、お手並み拝見といったところかもしれません。

しかし、2月に発表した14年3月期(13年度)第3四半期累計(4〜12月)の連結営業利益は1693億円ですから、前年同期比12・4%の増加となっておりますし、年度末まで3カ月を残して、今期通期の修正予想である1500億円を超えているのは徐々に成果の現れとみて良い結果も残しております。円安の原因が好調理由のひとつですが、これが売上高を底上げする原動力となっているのです。

ナイコメッド社買収や、糖尿病治療薬「アクトス」に対する安価なコピー製品(ジェネリック)参入の影響などもあり、今後も苦戦は雪纏ますが、米国や新興国の売り上げは円安を背景に大きく伸びておりますし、新製品の立ち上げも今のところ順調ですし、為替要因も手伝いもあります。ベースとなる国外の医薬品事業は概ね順調よみて良いと言えるのではと思います。ポイントはズバリ、 国内最大の医薬品メーカー・ガン治療薬、糖尿病治療薬など高齢化社会をにらんだ積極的な新薬開発。 米社買収など積極的な海外M&Aによる国際戦略の拡大は武田の思惑通りの戦略なのです。

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