自動運転に関するニュースを連日のように耳にする。フォードは2021年にアクセルもブレーキもハンドルもついていない完全自動運転の車両を、シェアードモビリティサービス事業者に提供すると公言している。シェアードモビリティサービス事業者とは、車両を所有/管理し、移動の需要を把握して車両をマッチングさせることで対価を得るビジネス主体のことだ。前提には、移動する個人は車両を自己所有するのではなく、移動したい時に呼び出して、自動運転で自走してきた車両に乗り込み目的地まで移動する、車両はその後、別の移動する個人を迎えに行く、という移動形態を想定している。
普及するまでには相応の時間を要するだろうが、タクシー料金の7割を占める人件費が掛からないことで、Door to Doorの移動を圧倒的に安価に提供できることを強みに、2020年代前半から少しずつ広がっていく見込みだ。
モビリティの変化に伴うプレイヤー構造の変化
このような移動形態においては、関わるプレイヤーも増え、それぞれが担う役割や責任も複雑化する。従来の主な関連プレイヤーは、完成車メーカー/部品メーカーと自己所有前提の個人くらいであった。しかし今後は、個人は所有者ではなく利用者としての位置づけになる。完成車メーカー/部品メーカーだけでなく、自動運転ソフトの提供者、マップメーカー、ハッキング対策のセキュリティ事業者、通信キャリア、クラウドなどのITインフラ/サービス事業者、信号や車線や渋滞状況など自動運転に必要な情報を提供する道路インフラ事業者、そしてシェアードモビリティサービス事業者も加わる。
その中で課題となるのは、責任問題である。事故が起きた際、現状では車両の欠陥がない限り、運転者が過失割合に応じて責任を追うのが基本である。自動運転においては、そもそも人間が運転者責任を負わなくなる上、自動運転ソフトやセキュリティ、通信やクラウドなど、車両の欠陥が生じうる箇所が圧倒的に増える。加えてディープラーニングの活用により、そもそも車両の判断根拠が開発する人間から手離れしていくことも、問題をより困難なものにしていく。