外国人社長就任
6月27日10時から大阪市で開かれた武田薬品工業の株主総会で、新社長としてフランス出身のクリストフ・ウェバー氏を取締役に選任する議案が出されました。しかし、同社の創業家の一部と元経営幹部の代表等は代表質問で、外国人を経営トップにする事に反対し、海外企業に買収されるリスクなどについて経営陣に経営責任を迫る場面がありました。この質問に対し、長谷川閑史社長は、人種や国籍にとらわれずにグローバル企業をリードする人材としては最も相応しい人選だと判断した、と答えています。
結局、株主総会では全ての議案について賛成多数によって承認されました。その結果、クリストフ・ウェバー氏は正式に社長に就任し、長谷川閑史氏は会長に就任しました。日本企業の経営トップに外国人が起用されるケースは増加傾向にありますが、創業家が反対するという異例の事態が起きたことから、外国人経営者の経営能力が一層注目される事態になったと言えます。
重要ポストの外国人化は外資買収リスクか
株主総会では、質疑の前に長谷川閑史社長が質問状への回答に30分以上を費やしています。特にクリストフ・ウェバー氏の採用については、武田薬品工業がグローバル競争力を持つために、国籍や人種に捕らわれない人材をキーポジションに採用することが必要で有り、日本人を含めた候補者の中から選んだ事を強調しました。
また、外国人社長を起用することによって外資による買収リスクが高まるのではないかとの質問に対して長谷川閑史社長は、関連性が分からないとして一蹴しています。クリストフ・ウェバー氏は挨拶で、誠実とは公正・正直・不屈であるとする「タケダイズムを踏襲していく」と述べています。
報酬からグローバル化なのかと非難
前述の通り、武田薬品工業は1781年の創業以来初めてとなる外国人社長を選任しました。社長に起用されたクリストフ・ウェバー氏は英製薬大手グラクソ・スミスクライン出身のフランス人です。創業家を含む元経営幹部株主らの反発も有り、株主総会は3時間4分という過去最長となっています。特に外国人をキーポストに就けることは「外資による乗っ取りだ」との反発がありました。その様な反発の背景には、外国人経営者の高額な報酬という実態がありそうです。
例えば武田薬品工業欧州子会社の社長を務めたフランク・モリッヒ取締役の報酬は、東京商工リサーチの発表に依れば10億1600万円で、日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏の9億9500万円を抜いています。また、同じく東京商工リサーチの発表では米国籍の山田忠孝取締役の報酬が8億3800万円とされています。社長であった長谷川閑史氏の報酬は3億500万円であったことと比べると、外国人をキーポストに採用する事への反発があったことは理解し易くなります。経営戦略より先に、報酬がグローバル化していると皮肉られても仕方が無いかもしれません。