海外企業買収に対する批判
創業家や元経営幹部の株主たちからの批判は、長谷川社長が進めた海外企業の買収にも向けられました。買収した海外企業とは、ミレニアム社(アメリカ)とナイコメッド社(スイス)で、計2兆円を超える大型買収のことを示しています。同株主等は、これらの買収を明らかな失敗であると批判しています。しかし長谷川社長は、これらの買収は成長確保と成長回復のための施策であり、成功だったと反論しました。株主等の批判は、これらの買収結果として同社の利益が減少していることを関連づけたものでしたが、長谷川社長はこれについて、利益が減少した理由は別に有り、同社の業績を牽引していた4つの医薬品の特許切れと自社製品比率が低下したことによる収益性の低下という「構造的変化」にあると反論しました。
また、買収により有望な新薬を販売でき、成長が見込まれる新興国への販路が広がったとも主張しましたが、株主からは「虚勢だ」との意見も出ています。さらに創業家の一人からは、業績向上が達成できなかった場合、新経営陣は退陣するのか、との質問が出ましたが、長谷川社長は「頑張ります」とのみ答え、明確な回答を避けています。
株主の反応
それでは武田薬品工業の経営は危機的状況下というと、そのようには見えません。2014年3月期の連結営業利益(日本基準)は1557億円で前期比27%です。また、売上高営業利益も9%超でした。しかしこの営業利益は、2007年3月期のピークに比べれば約3分の1に低下しています。これは既に長谷川社長が語ったように、競争力の高かった主力製品である糖尿病薬「アクトス」や胃潰瘍薬「タケプロン」の特許が切れたことが響いていると考えられます。そこで同社の課題は買収したミレニアム社とナイコメッド社の貢献度を上げることになります。特にクリストフ・ウェバー氏は、ナイコメッド社買収により28カ国だった販路が80カ国以上に広がったことを評価しています。このことで新興国の開拓を急ぐとしています。このような状況下で行われた外国人社長起用について、創業家として反対した一人は、外国人が日本の文化を理解することは容易ではないとし、外国人が短期間でトップに就任したことを、異常な事態だと語っています。
一方、別の株主の一人は、日産のゴーン社長も経営手腕を発揮しているのだから、武田も外国人社長で良いのではないか、と語っています。また、外国人の意見を取り入れることは良い事だが、トップである必要なない、との意見を持つ株主も居ます。結局、外国人社長の起用に反対した株主は一部であり、業績が伸びて配当が増えるのであれば、外国人社長でも構わない、という意見もあり、武田薬品工業は、外国人リーダーの元で、様々な課題に挑むことになります。
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