先進国の企業によるM&A(企業の合併買収)が盛んです。しかも大型案件が増えていると日本経済新聞(平成26年5月5日付)では伝えています。記事によると2014年1月~4月の買収総額は1兆ドル(約102兆円)を超えて7年ぶりの高水準となり、しかも1件あたりの買収規模が膨らんでいるということです。アメリカGE(ゼネラルエレクトリック)によるフランス重電大手アルストムのエネルギー部門買収交渉、スイスのセメント世界大手ホルシムによるフランスラファージュとの合併、アメリカ医薬品大手ファイザーによるイギリス医薬品会社アストラゼネカへの買収提案(この案件はアストラゼネカにより拒否されています)など、いずれも大きな案件です。調査会社ディールロジックの集計では2014年1月から4月までの企業M&Aの金額規模は前年同期に比べ約4割増えている一方で、買収件数は約1万1,500件と9年ぶりの低水準となっているようです。金額の大きな案件がいかに増えているのかがこの数字からもわかります。
世界を代表する企業による買収は今後も続くとみています。リーマンショック後、財務が安定している会社はさらに資金力を付け、また、株式市場が回復基調にあり、株式交換による企業買収も進めやすくなってきました。社債の発行環境も改善してきており、財務良好の企業は資金調達をしやすくなっています。資金力やファイナンス力がある企業は、業界のライバル企業に次から次へと買収を仕掛け、その規模を大きくし、業界内での優位性をさらに高めることができます。
また、他業種の企業を買収し、多角的な経営を行って規模を大きくしていくことも考えられます。業界の中位企業は規模に飲み込まれないように他社との合併を選び、規模で対抗するか、合併を選ばず、残ったシェアを守っていくしかありません。ここで成長の勢いに差が出てきます。これからの時代、個人の富ばかりでなく、企業の格差社会も加速していくのではないでしょうか。
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