2010年に中国のGDPは日本を抜いて世界2位となった。中国経済の高成長の恩恵を日本人が享受するために、中国株への投資は有効な手段だ。しかし、中国株は順風満帆に上昇を続けたわけではない。2008年と2015年に暴騰と暴落が短期間で発生した。調べないで投資をすると損失が発生する危険性があるので、中国株について勉強することで効果的な投資を行うべきだ。ここでは中国株投資をするにあたって知るべきことを記載する。
中国株の特徴
1990年に設立された上海証券取引所はA株とB株に分かれている。A株は国内投資家向けの市場で外国人投資家による投資が制限されており、B株は制限されていない。
2014年11月17日に上海香港ストックコネクトが始まったため、外国人投資家もA株への投資を行えるようになった。しかし、人民元決済しなければならないうえ、空売りの制限などの規制もある。
それでもB株よりA株の方が時価総額は高く、銘柄の種類も多いので外国人投資家にとって魅力が高まったといえる。2008年と2015年に暴騰と暴落が発生しており、市場の値動きの大きさが特徴だ。
香港証券取引所に上場している企業で、中国本土の企業であり中国当局に承認されている企業の株式をH株と呼ぶ。H株は香港ドルでの取引となっている。
香港H株指数を見ることで、全体的な変化を判断することができる。A株とH株のどちらにも上場している企業があり、その場合はどちらに投資をすることも可能だ。
中国株の動向
上海証券取引所の時価総額は2016年11月末時点で501兆円となっており、世界第4位だ。中国のGDPは50%近くを総固定資本形成が占めている。
総固定資本形成とは設備投資や公共事業などのことで、2008年のリーマンショックの際に景気対策として公共事業や設備投資への助成を行ったために割合が大きくなった。
日本の2015年が23%なので、割合の大きさが分かる。中国株において公共事業や設備投資関連の銘柄の存在感は大きい。中国株において政策の動向は大切なのだ。
たとえば、PPPプロジェクトは2016年7月末時点で619件、1兆19億人民元もの額の投資が行われている。1兆円単位の政策が短期間で決定されるので、政策の登場とともに株価も大きく動く。
そのため、政策情報を常に入手し続けるべきだ。中国の海外投資も拡大しており、2016年10月時点の累計額は9619億3000万元に達している。海外事業で利益を出す中国企業も、中国株式市場において存在感を増している。
中国株の今後の予測
中国政府は総固定資本形成の高さを是正するため、投資から消費への経済構造転換を進めている。2016年1月の海外からの投資も67.6%がサービス業で、これを裏付けている。
今後は、消費財メーカーや小売業などの消費関連企業が伸びることが予想されるので、消費関連企業に投資をすることで政策を先取りできる。中国の鉄鋼シェアは世界の半分近くを占めており、増加が難しい状態にある。
2016年の鋼材輸出は減少に転じ、需要面も困難に直面している。そのため、鉄鋼業界への投資は厳しい。業界再編や企業合併も進んでいるため、勝ち組と負け組を把握してから投資すべきだ。2014年に習近平国家主席が提唱した一帯一路政策は継続している。
一帯一路とは、シルクロードを通る「一帯」と中国沿岸から東南アジアを経由してアラビア半島やアフリカ東海岸へと至る「一路」を意味している。この政策は建設業を中心に恩恵を受けているので、強みを持つ企業を探るのも有効だ。
中国株を見るときの注意点
2008年と2015年には、空売りの制限や大株主の売却制限が行われた。下落時には売れなくなる可能性があるといった、投資家に優しくない政策が実施されることがあるため、中国株の投資は余裕資金で行うべきだ。
上海証券取引所は誕生してから30年程度しかなく、証券市場が発展途上の段階で、制度が不完全だ。中国企業の情報開示は先進国企業に比べて少なく、監査も不十分だ。米国などの会計基準を採用している中国企業に投資をする、複数の業界に投資して1つの不正での影響を減らすといった対策が必要となる。
中国株は人民元または香港ドル、米ドルでの取引となるので、為替リスクが発生する。為替の動向をチェックし、損失を最小限にすべきだ。銘柄によっては取引量が少なく、売りたいときに売れない恐れがある。事前に売りやすさを調べるべきだ。
また、中国株に関する制度は日本とは異なっており、たとえば株式の配当の権利は株主総会で決められた日に保有することで得ることができる。あらかじめ制度を把握しておくことが大切だ。
中国への投資も視野に
以前とは異なり、外国人投資家もA株の取引が行えるようになったことで、中国株投資の魅力が増した。中国株は政策に敏感に反応するので、政策に対する調査が必要だ。
消費関連企業に投資することで、中国経済の投資から消費への構造転換を先取りできる。証券市場はまだ不完全で企業の情報開示などに問題があり、為替リスクもある。しかし、総合的に見るとリスクを魅力が上回るので、金融資産を中国株へ投資することは有効な資産運用法だ。