中国では長らく続いた景気減速に歯止めが掛かり、ここもと景気は持ち直してきた。中国国家統計局が10月19日に公表した7-9月期の実質成長率は前年同期比6.7%増と、1-3月期から3四半期連続の同6.7%増と横ばいで推移している。また、同時に公表された前期比の統計をみると、1-3月期の前期比1.2%増(年率換算4.9%前後)をボトムに、4-6月期は同1.9%増(年率換算7.8%前後)、7-9月期は同1.8%増(年率換算7.4%前後)と成長率は回復基調にある(図表1)。

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次に、中国経済をより詳細に把握するため景気10指標を確認してみよう。需要面の統計をみると、個人消費は堅調である。2015年10月に開始された小型車減税の影響で自動車販売が好調なことが背景にある。投資はインフラ投資や不動産開発投資が下支えしているものの製造業の投資意欲は依然として冴えない。輸出は引き続き前年割れで推移しているもののマイナス幅は縮小傾向にある。

供給面をみると、工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)は10-11月期に前年同期比6.0%増と、7-9月期の同6.0%増と同水準で横ばいである。製造業・非製造業の区分では、製造業PMI(購買担当者景気指数、中国国家統計局)は昨年の不振から立ち直りつつあり、非製造業PMI(商務活動指数、中国国家統計局)はサービス化の進展を背景に引き続き堅調に推移している。

その他の重要指標をみると、電力消費量は今年に入り伸びが回復してきており、道路貨物輸送量も回復基調、生産者物価(工場出荷)は約4年半に及ぶ下落に歯止めが掛かり上昇に転じている。通貨供給量(M2)は政府見通しの「13%前後」を依然として下回っているものの伸びの鈍化には歯止めが掛かりつつある。

以上で概観した10指標をそれぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”として表示したのが図表2である。

最近の推移をみると、需要面の3指標(小売売上高、固定資産投資、輸出金額)は“○”も“×”も長続きせず一進一退を繰り返している。供給面の3指標(工業生産、製造業PMI、非製造業PMI)では、工業生産は3ヵ月連続で“×”だが製造業PMIと非製造業PMIは“○”が多くなってきた。工業生産は実質表示であるためインフレ率の上昇が“×”が続いた原因とみられる。その他の指標(電力消費量、道路貨物輸送量、生産者物価(工場出荷)、通貨供給量)は“○”の数が徐々に増えてきている。

“○”=1点、“×”=0点として集計した「景気評価点ⅰ」を確認してみよう。11月は分岐点となる5点を上回る7点となった。中国の景気は持ち直してきたようである。

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最後に、中国経済の動きがひと目でわかるよう成長率に換算してみよう。これは工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数としてニッセイ基礎研究所で開発した回帰モデルで推計したものである。結果は、今年2月の前年同月比6.2%増を底に、10月には同6.7%増、11月には同6.9%増と、ここもと経済成長率は緩やかな回復傾向を示している(図表3)。

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(*1)景気評価点の詳細については「 景気の動向を簡単に把握できないか? 」年金ストラテジー (Vol.219) September 2014に記載
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三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

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