最近は、テレビでも「ふるさと納税」の特集が組まれるなど関心が高まっており、特産品をもらって楽しんでいるという人も増えてきた。その際、税制上のメリットを受けるために「ワンストップ特例制度」を活用している人も多いはずだ。
ところが、住宅ローン控除や医療費控除などで確定申告をするとワンストップ特例制度の申請が無効になってしまうということを知っているだろうか。「特産品をもらって喜んでいたら実は高い買い物だった」ということにならないよう注意が必要だ。
まずは日本の税制のおさらいを
日本の税制は「申告納税制度」を採用している。そのため、税は納税者が税務署に確定申告して納付するのが原則だ。
日本中の人が全て税務署に確定申告するとなったら納税者も大変だし、慣れない作業で不備も多く発生するだろう。また、それを受ける税務署の職員も国民全員の所得を確認するとなったら大変で、現実問題、現行の職員数ではとても対応できない。
そのようなことから、サラリーマンについては会社であらかじめ給与から税金を天引きし、年末に一定の控除を調整して税額を確定することにしている。そして納税も会社に責任を負わせることで、確実に税を徴収しているのだ。これによって多くのサラリーマンは確定申告をする必要がなくなり、税務署もサラリーマンについては納税のチェックを事実上しなくて済んでいる。これを「源泉徴収制度」という。給与・報酬の他、配当、利息、退職金、年金なども源泉徴収される代表例だ。
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便利な「ワンストップ特例制度」の注意点とは?
このように多くのサラリーマンは、確定申告をしないで済むわけだが、ふるさと納税は寄付金控除の一種のため、平成27年3月31日寄付分までは確定申告が必要だった。それが、27年4月1日からは「ワンストップ特例制度」が導入され、確定申告をしなくても所得控除が受けられるようになった。
この背景には、手続きを簡素化して利用者を増やし、地方活性化を推進したいという思惑がある。また、ふるさと納税が増えることで確定申告の提出が増加すると、税務署の負担が大きくなるので、それを回避したいという狙いもある。
このワンストップ特例制度で注意しなければならないのは、提出期限が翌年1月10日までということだ。期限を過ぎた場合や、寄付した自治体の数が6以上の場合にはワンストップ特例制度は使えず、確定申告が必要になる。また、別の理由で確定申告する場合も、ワンストップ特例制度は無効になってしまう。
申告納税制度が原則なので、確定申告する場合にはそれが優先されるからだ。そのため、ワンストップ特例制度を利用していても、確定申告する場合には改めてふるさと納税(寄付金控除)の申告をしないと節税効果は得られない。つまり、3万円を寄付して特産品をお礼としてもらったという場合、単に3万円で特産品を買ったのと同じになってしまうのだ。
ワンストップ特例が無効になった場合の対処法
では、サラリーマンが確定申告しなければならない場合とはどのような場合か。まず、年収2000万円を超えている人や、給料を複数箇所からもらっている人などは確定申告が必要になる。
ほかにも、副業として事業所得を得ている場合や、不動産取得があるような人も、それらの所得に対して確定申告が必要になるので、結果的に給与所得についても確定申告が必要になる。
その他、義務ではないが、年末調整をし忘れた場合や各種所得控除を受けたい場合にも、確定申告が必要になる。具体的には医療費控除を受けたい場合や、住宅ローン控除をはじめて受ける場合などだ。
もし確定申告でふるさと納税について申告するのを忘れてしまった場合、「更生の請求」という手続きがある。更正の請求書を税務署長に提出すると、その内容が審査され、税額の計算に誤りがあって納めすぎと判断されると、減額更正の決定がなされ税金が還付される。ただ、更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内なので、その点は注意してほしい。
高い買い物を避けるために……
ふるさと納税は実質2000円で全国各地の特産品などがお礼品としてもらえることから大変な人気だが、自ら税の納付先を選べることや税金の使途をコントロールできるという点でも優れている。
税金の使い方は基本的に指定できないものだが、ふるさと納税は、その町の環境のためというようにある程度使途を指定できる。生まれ故郷を応援する目的で寄付をしてもよいし、特産品目当てで寄付をしてもよいが、税金の支払いをコントロールできる貴重な制度なので、大いに利用するとよいだろう。
今回は、ふるさと納税に関して、ワンストップ特例制度を申請していても税の優遇が受けられない場合があることについて解説してきた。細かいことはともかく、税については確定申告が原則で、確定申告をする場合には全ての所得や各種控除について申告をしなければならないということだけ押さえておいてほしい。(ZUU online 編集部)
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