賃貸マンションを建てた方が更地より固定資産税が減額されるケース

以上の点から賃貸マンションを建てた方が更地より固定資産税がお得になる事例、もっと言えば、購入費用ぶんがまるまる固定資産税がお得になる事例も充分に考えられます。一例として、実価格4億8000万円の更地の評価額は3億6000万円(標準税額504万円)ですが、この土地に1億6000万円の資金を用いて賃貸マンションを建てた場合、第2章の評価額の軽減と第3章の「小規模住宅用地の特例」が生じるため、評価額が4000万円(標準税額56万円)ぐらいまで下がります。一方、賃貸マンション自体の評価額は高くても8000万円ぐらいにしかならないため、増える標準税額は112万円(当初5年間は第3章で説明した新築住宅の税額の軽減措置により56万円)です。

要するに、当初5年間は固定資産税が年間392万円、それ以降も年間336万円減免されます。50年間で支払う固定資産税の総額は約8000万円です。更地では同じ期間で約2億5000万円必要になるため、ほぼ建設費用がそのまま帰ってきます。要するに、賃貸マンションがタダで建てられるのと変わりません。実際は減価償却されるため、建物部分の固定資産税はもっと少なくなります。耐用年数50年として、50年間で支払う固定資産税は土地を含めて約5000万円、購入費用と合わせても約4000万円帰ってくる計算になるため、賃貸マンションを建てた際、分譲マンションの一角や一戸建て住宅、要するに、実際に住むための住宅を購入する予算に当てられます。

駐車場と賃貸マンションを一体化する

皆様が賃貸マンションを建設する場合、一緒に駐車場を用意すると思いますが、その際、入居者に貸し出すのを前提として賃貸マンションの敷地外に月極駐車場を用意するのではなく、賃貸マンションの敷地内に入居者専用の駐車場を用意しておく方が固定資産税対策としては優れます。と言うのも、別の地番に駐車場を用意しておくと駐車場が駐車場として扱われてしまい、第2章~第3章で説明した賃貸マンションとしての評価額の削減や「小規模住宅用地の特例」及び「新築住宅の税額の軽減措置」等の優遇措置が用いられなくなり、その部分は更地と同じ基準で固定資産税が課せられるため、固定資産税に関しては大変不利になります。

もちろん、駐車場が「道路」と認められて固定資産税の非課税対象になるのであれば駐車場を分筆したままにしておくのも良いですが、適用できる事例はかなり限られると思いますし、適用できたとしても賃貸マンションと無関係な人間が通行してしまいますから、ここは賃貸マンションの一部として駐車場を用意する方が良いでしょう。

ただし、必ずしも地番を一緒にしておく方が良いとは限らず、別ける方が有利になる事例もあります。例えば、隣接して2つの賃貸マンションを持っている様な場合、2つの地番に分筆しておく方が、片方の土地の評価額が低下するかもしれません。もちろん、その間に道路が存在していれば、3つに分筆して道路部分を非課税にしておくのが最もお得です。

家賃収入が入る賃貸マンション経営がお得

何もない更地に賃貸マンションを建設するだけで固定資産税が大幅に割り引かれる点が分かりました。しかし、賃貸マンションを建設する意味は単なる固定資産税対策ではありません。賃貸マンションによる家賃収入が得られる点が最大のメリットです。1億6000万円を投入して建設した賃貸マンションの場合、どんなに少なくても年間320万円の家賃収入が得られるはずです。家賃6万円で16戸入れば年間960万円になります。一方、1年間の固定資産税は高くても約160万円ですから、それだけで年間約800万円の収入になり、20年でトントンです。それ以降は賃貸マンションとしての価値が下がるかもしれませんが、それでも賃貸マンションとして残しておくだけで一定の収入源になります。

例えば、家賃が4万円に落ちるとしても、640万円程度の家賃収入が入る上、土地分の固定資産税が大きく下がりますから、賃貸マンションを保有しておく方がお得です。また、賃貸マンション経営で得られる家賃収入を元にして、他の土地の固定資産税を納税するための資金源に回すのも良く、固定資産税の節税と納税資金の確保と言う両方の効果があります。特に住宅用地の特例措置や土地の税負担調整措置が適用される場合、または、家屋の新築軽減措置が適用される場合、固定資産税が大幅に割り引かれるため、賃貸マンション経営には有利な点が数多く存在します。