前回の記事ではマンション投資で成功する秘訣は、「長期の安定した家賃収入」で万が一の資産価値の下落に備える事だと説明した。安定した家賃収入を得るためにはそのマンションの収益性が最重要である。今回の記事では収益性の高い物件かどうか判断するための「利回り」や「融資」について解説する。
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マンション投資のメリットとデメリット【第2回】
<次回の記事>
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収益性の高い投資用マンションの選び方【第4回】
マンション投資の利回りの考え方
マンション全般での平均的利回りは6%前後と言われている。利回りとは投資した額に対してどれくらいの利益があるのかを計算する方法だ。
例)1500万円のマンションを購入
家賃月10万円で貸せる場合=年家賃収入は120万円
120万円÷1500万円=0.08 利回りは年8%となる。
しかしこれは購入価格と想定家賃だけで試算したものであり表面利回りと呼ぶ。実際に物件を購入する際には、仲介手数料、登記費用、火災保険料、不動産取得税、必要であればリフォーム費も加算しなくてはいけない。また初期費用だけではなく、取得後は毎年の固定資産税、そして修繕が必要になったときの費用なども考慮した実質的な収益の割合を知る必要がある。このように算出する利回りを実質利回りという。さらにはもっとシビアに毎月の返済額も差し引き手元にいくらの現金が残るのか(キャッシュフロー)も想定しなくてはいけない。
実質利回りとキャッシュフローの割り出し方
利回りで7%や8%と言った優秀な数字が叩き出せても、毎月その家賃がそのまま残せるとは限らない。融資により購入する場合には毎月の返済があるからだ。実質利回りと併せて手元にいくらお金が残るのかキャッシュフローも同時に割り出す必要がある。
【例】
物件価格1500万円
諸費用75万円(約5%)
頭金150万円(10%)
ローン15年3% 借入額1425万
月々返済額約9.8万円(年返済額117.6万円)
年間家賃収入120万円(表面利回り8%)
固定資産税、都市計画税約15万円
月額管理費5000円
月額修繕積立5000円
このように表面利回り8%のマンションを購入してもローンの返済をするので精一杯の収入になる。そこへ様々な諸経費も考慮して実質的な数字を出すと年間250,895円の赤字である。収益不動産物件の検索サイトで8%の物件を見つけて購入しても、年間25万もの赤字になる可能性があるのだ。ここでは常に満室であることを想定しているが実際には空室率も試算に盛り込むべきである。
では先ほどの条件を1つだけ次のように入れ替えてみよう。
- 1.5%の融資で借り入れることができたら…赤字は131,471円に収まる
- 返済期間を5年長くすると…赤字は年間18,362円になる
- 物件がもし1200万円で購入できたら…ようやく年間925,028円の黒字になる
8%の利回り想定でも最初の計算では毎月赤字だった。手元に現金が残るように10%以上の表面利回で計算すればキャッシュフローに余裕がでてプラスになる。しかし首都圏で10%の利回りマンションを探すと築20年以上のものばかりである。そこで築年数が経っているマンションでは融資が可能か、設備やリフォームにどれくらい費用がかかるかも同時に調べる必要がでてくる。段々と物件をどのように見るかがわかってきてもらえただろうか。
マンション投資に使える融資とその活用方法
先ほどの試算のように、マンション投資では融資の選択と活用方法がかなり重要になってくることがわかる。金利、返済期間、借入額が黒字か赤字かを左右する。マンションはRC構造で、耐用年数が47年と長めなので中古で購入しても長期での減価償却が可能だ。ローンの返済期間はこの償却期間内に納めることで返済期間中に高額な所得税が発生することが避けられる。また、借入先の金融機関によっては低金利での融資もあるため期間の短さかとどちらが優位かシュミレーションしなくてはいけない。
- 日本政策金融公庫(政府の行う融資) 低金利(1%後半)だが10年から15年と返済期間が短期間
- 銀行の不動産投資ローン 金利は2%後半から上は6%台になるが長期での返済が可能
- ノンバンクの不動産投資ローン 銀行と似たような条件だが、頭金を入れないフルローンが可能になる場合がある
不動産投資で受けられる融資先はこの3種がメインだ。低金利だから公庫がいい、フルローンが可能だからノンバンクがいいという判断ではなく、実質的な黒字運営をするための融資を選ぶことが重要である。融資の条件は属性や自己資金、年齢によって多様である。各金融機関によってもさらに特徴がかわってくる。誰かの融資条件が必ずしも自分のマンション投資に合っているとは限らないので自らが出向き多数の融資先に条件の提示を求め、実質的なキャッシュフローに基づいたアドバイスを受けるべきである。
マンションに限らず不動産投資における利回り計算は「購入できる金額」を算出するのではない。融資条件をも盛り込んだ実質的キャッシュフローを割り出すための数字を出し、購入するに値する収益性のある物件かどうかを見極めるために行う。
数字に関する知識を押えたので次回は物件選びについて言及する。(片岡美穂、行政書士・元土地家屋調査士)