マンション投資,節税対策
(写真=PIXTA )

この記事では実際の税金計算法などは解説しない。それよりも伝えたい鉄則を中心に解説する。マンション投資を考えている方の中には「節税対策」を念頭に置いている人がとても多い。確かにマンション投資を減税に役立てることは可能である。しかしマンション投資を節税対策で始めてしまうと思わぬリスクを招く。今日の記事ではこの事を常に忘れないようにしながら読み進めて欲しい。

<前回の記事>
収益性の高い投資用マンションの選び方【第4回】

<次回の記事>
マンション投資、賃貸経営とさらなる資産形成の方法とは【第6回】

マンション投資が節税対策と言われる仕組み

節税対策で投資マンションを購入してしまう人の大半が属性の高いサラリーマンや勤務医などだ。彼らは給与から天引きされている所得税が殆ど還付されない。そこで不動産所得を得て確定申告することで給与から天引きされている所得税の還付を受けられると営業担当者に持ち掛けられるのだ。

不動産の所得を税務申告する際には家賃収入から必要経費を引いて所得額を算出する。この必要経費には購入した時に支払った仲介手数料、固定資産税、火災保険料、建物の減価償却費、その他賃貸運営するための支払ったものを計上することが可能だ。この経費部分を家賃収入よりも多く計上させて所得税からの還付を受けるという仕組みだ。住民税も所得税と連動しているので、確かに結果的には節税できる方向となる。

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所得税以外でマンション投資をする人の節税対策

相続税対策で金融資産を現物である不動産に変えたという人もいる。金融資産では100%額面額が相続資産として計算される。

しかし不動産を評価するときは相場の60%から80%だ。5000万円の現金を持っているのと、5000万円の不動産を持っているのとでは、相続税を計算するときの資産評価がこんなにも差がでるからだ。2016年1月に相続税が事実上増税されたことを受け、今までは相続税の対象とはならなかった資産額の人達も課税対象となる改正となった。その対策としてマンションを購入する人も増えた。

節税目的で始めるとマンション投資で収益をあげられない

節税としてマンション投資を始める。優雅で資産家的な発想のように思えるが節税とマンション投資で収益を上げるということは相反した位置にあると考えていただきたい。節税するとお金を残せない。経費計上でマイナスになってしまうから所得税が戻ってくるのだ。相続税も同じ考えだ。せっかく節税してもその物件が収益をあげなければお金は残せない。

不動産投資ではきっちりと「税金が納付できている物件が手元に現金を残してくれる」のだ。経費計上で不動産所得をマイナスにすることばかりに気を取られていると、とんでもない事態も引き起こす。

例えば「デッドクロス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。不動産投資で収益が出ているのに現金的にマイナスに陥るという現象だ。特に中古物件の場合に起こるのだが物件を購入後しばらくは減価償却費が経費計上できる。

実際には支出を伴っていないのに経費計上できる。家賃収入でプラスになっていても税務上はマイナスとなりお金を残せる期間だ。しかしこの償却期間が終わったとたんに帳簿上はプラス運営になり多額の所得税を支払う義務が生じる。まだローンの返済が残っている場面で起こる現象なので、不動産投資の黒字破綻ともいわれている。

このように一時の所得税還付などで節税気分を味わうのではなく、税金面については総合的に試算して何年先ものキャッシュフローを見据えることが重要なのである。購入後や翌年の還付だけに魅力を感じて購入している人があまりにも多いので驚きを隠せない。

その他のマンション投資に関連する税金

節税面以外では不動産購入時に支払う登録免許税(登記にかかる税金)と不動産取得税がある。登記は購入時に同時に支払うので予算として考えている人が多い。しかし取得税を予算に入れず忘れた頃(約3か月後)に納付書が届き慌てる場合があるので注意が必要だ。自己資金を全て購入につぎ込んでいると支払えなくなる。

また保有中には固定資産税の支払いもきっちりシュミレーションしておかなくてはいけない。第3回でもこの固定資産税を参入してリアルな利回りを算出して欲しいと解説した。立地の良い物件だとそれなりに固定資産税も高くなるので十分に注意して欲しい。

そして売却のチャンスが訪れた時にはその譲渡益に対して譲渡税が課税される。売却するということは利益発生が前提であろうからこの譲渡税も当然のように含んだ試算をしているはずだ。しかし中には始めての投資物件売却で譲渡税を考慮しないで譲渡益を得てしまい、思わぬ税金に驚く人もいる。

どんな不動産投資でも税金について総合的に理解してから始める必要がある。不動産投資は常に税金との戦いだと思ってもいい。個人の所得税還付を狙うだけでは節税とは言えない。法人設立をして法人税や消費税とも関連付けた節税対策をとれるようになって初めて「不動産投資で節税して現金を残す」が可能になるのである。但しこれくらいの規模になると大きく資産形成したい人向けの内容になる。まずは節税対策ではなく、潤沢に収益を上げることができるマンション投資への一歩を踏み出すことが先決である。

次回はいよいよ最終回、管理面と資産形成についてだ。(片岡美穂、行政書士・元土地家屋調査士)

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