データマイニングで、顧客の隠れた需要を導きだす

データマイニングは、ユーザーに定量調査を行っていては、明るみに出てこない隠れたニーズを掘り起こします。購買者の購買データを解析しているうちに「ワイドハイターEX」という同社の漂白剤がハブ商品となっていることが分かり、他の商品とあわせて購入されているケースが多いことが判明したのです。しかも、消費者の多くは、漂白剤と柔軟剤仕上げ剤を一緒に使ってはいけないという誤解を持っており、この誤解を解く事により、ハブ商品である「ワイドハイターEX」の売上げを向上させれば、他のセットで購入されている商品の売上げも同時に向上させることが出来ます。この結果、ワイドハイターEXの訴求方向を変更し「柔軟剤の香りがひきたつ」というメッセージとともに新たなテレビスポットを流しました。その結果、2012年の販売額は発売初年度の2008年に比べて3倍となり、発売から4年を経て売上高100億円というヒット商品になったのです。


おわりに

さて、今でこそビックデータやデータマイニングが重要視される時代になりましたが、花王が「デジタルビジネスマネジメント(DBM)室」を起こした10年前には、今ほどデータが重要視されていませんでした。データ解析に注目が集まる前から専用の部署を立ち上げ、実績を少しづつ積み重ねてきた結果が、今の成功に現れているのでしょう。SNSの普及とともに、前よりもいっそう顧客の動向がデータとして吸い上げ易い時代になっています。

しかし、そこで重要視されるのは、データそのものの収集というよりはむしろ仮説力です。花王のDBM室のスローガンの一つにも「No Assumption, No Suggestion(仮説なくして、提案なし)」が掲げられています。ワイドハイターEXの事例にしても、そもそもデータを解析する際「洗剤」「漂白剤」「柔軟仕上剤」「消臭剤」という医療用洗剤の4つのカテゴリが互いに影響を及ぼし合っているという仮説のもと、それぞれのカテゴリに属する商品が互いにどう影響を与えているかを解析した結果、ハブ商品である「ワイドハイターEX」が浮かび上がってきたのです。しかも、これをただデータとして提示するだけではなく、マーケティング部門にも分かり易いようにインフォグラフィックとして提示しました。今後もデータマイニングは注目の技術ではありましが、実際に活用するには解析のみならず、仮説力、そしてそれを実行部門に説明する力があわせて必要となることでしょう。

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