◯円安は今後もトレンドとして定着するか?


しかしながら、現在は、少し前に民主党政権の一閣僚だった菅さんが、適正な為替水準を95円だといったことが、大批判を受けていたことが信じられない状況です。というのも、石破氏、甘利氏、日銀総裁候補の黒田氏、浜田氏などは、こぞって円安ターゲットを公にし、その一言一言が外国人投資家の強烈な買い意欲を誘っています。

少し甘利発言がぶれた以外は、ここまでは安倍氏としてはベストジョブをしていると言えるかもしれません。ここでいうベストジョブとは、彼がポリシーとして宣言したことが、しっかりと遂行されているという意味においてです。

見逃してはならないことは、あまり行き過ぎの円安は必ずしも好ましくないという見方を目にすることもある反面、カルロスゴーン、松本大といった人達が、1ドル100円が適正だという事を言っているように、少しづつ円安コンセンサスが出来上がりずつあるように思われることです。こういった観点からすると、このお祭りにはもう少し参加しても良いのかもしれませんと考えざるえません。

しつこいようですが、少しでも不慮の事態が起こってしまうと脆くも瓦解してしまいそうな政治家、内閣であるため、あまり中長期で考える意味はなさそうだというのが本音です。

◯アベノミクスの帰結への予想


しかし、短期的なラリーは別として、中央銀行を政府の影響下に取り込んでのインフレターゲット、際限なき量的緩和を要求していくということの結末はかなり惨いことになってしまうものではないかと思っています。そもそも感覚的に2%をターゲットにしていたはずのものが、結果として3%、5%といった制御不能な値まで触れてしまう可能性は否定できません。

もしそのようなことが起こってしまった場合には、日銀が長い年限の国債買いオペを行う一方(銀行のバランスシートが壊れます)、短期金利は上げていかざるを得ないといったような、政策面での反故が生じる可能性はほぼ明らかでしょう。スーパーインフレで国の借金を消してしまうという壮大な計画でもない限り、極めて予測不能な事態になるものと思われます。

(編集注:通常は中央銀行が買いオペレーションをする場合、国債への需要は高まり金利には低下圧力がかかります。しかし、今回のように高いインフレの可能性がある場合には、想定インフレ率以上の金利がなければ投資家は国債を買わないため、強い金利の上昇圧力となります。そのような状況は既発国債の価値を摩耗させるため、既発国債を多く所有する邦銀のバランスシートを痛める可能性があります。また、財政を新規の国債発行に頼る日本政府自身にとっても大きな問題となる可能性があります。)

それにしても、中央銀行が政治家たちの意向を受けて市場の救済に動くといった事態が、世界中で常態化してきている中で皮肉にも、政府の片棒を担がないという意味で、今まで一番保守的であった日銀が、最終的に引っ張り込まれて行き、完全な無秩序状態をFRBよりもECBよりも先に作り出してしまうのは皮肉な気もします。

(編集注:冷戦崩壊以降のここ二十数年、いわゆる新自由主義的な枠組み中では中央銀行は政府から完全に独立し、独自の意思決定をするのが良いとされてきました。そして日本銀行は、政府からの独立性や中立性という意味合いに置いて優等生であると世界的な評価が高かったのです。しかし、リーマンショック後の経済・相場の激変のなか、各国政府は中央銀行への介入を強める例が増えてきていました。)