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住友不動産の2014年3月期決算は売上高が7,803億円(前期比436億円増)、営業利益が1,605億円(前期比91億円増)となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新する好調な決算でした。同時に発表した2015年3月期決算見通しでも、売上高が8,100億円(前期比297億円増)、営業利益が1,650億円(前期比45億円増)であり、最高益の更新を予定しています。好調決算を受け、株価面でも5月13日(水)の終値4,145円から上昇傾向にあり、6月3日には4,561円をつけております。また、業界最大手の三井不動産と時価総額を比べると、売上高が約2倍の差があるにもかかわらず、時価総額では1.65倍の差異にとどまっており、市場からの評価も高くなっています。このように好調決算が続く住友不動産ですが、決算、業績に死角はないのかを本稿では見て参ります。


住友不動産の決算解説:オフィス

事業ごとの決算解説の前に、住友不動産の事業ごとの売上高比率を見て参ります。図1のように住友不動産のオフィス賃貸事業は連結売上高の36%、営業利益の61%を占める中核の事業になります。

図1 住友不動産の事業別の売上高、営業利益(2014年3月期)

単位:億円

売上高(前期比)

営業利益(前期比)

賃貸事業(オフィス)

2,837(+54)

980(+38)

販売事業(マンション)

2,341(+19)

392(+3)

完成工事事業

(リフォーム、注文住宅)

2,012(+301)

187(+30)

流通

572(+63)

180(+35)

合計

7,803(+436)

1,605(+91)

出典:住友不動産IR資料より筆者作成

住友不動産のオフィス事業の特徴は収益性が高いことです。図2は住友不動産、三井不動産、三菱商事3社のオフィス賃貸事業の売上高営業利益率を比較したものですが、住友不動産のオフィス事業の売上高営業利益率が他社と比べて10ポイント近く高くなっております。

図2 住友不動産、三井不動産、三菱地所3社の賃貸事業の収益性

(単位:億円)

会社名

売上高

営業利益

売上高営業利益率

住友不動産

2,897

980

33.8%

三井不動産

4,497

1,092

24.2%

三菱地所

4,842

1,081

22.3%

出典:各社IR資料より筆者作成

この要因は、東京都心の収益率の高いオフィス事業に特化している点です。2014年3月期新規竣工のビルは千代田区で1棟、港区で1棟となり、2015年3月期も港区、千代田区、中央区となります。このように、全国に商業施設を展開している三井不動産、札幌や名古屋、大阪等の地方中核都市でも物件を持っている三菱商事と比べると、東京都心の物件に絞り込んでいるが故に、収益性が高くなっていると考えられます。


住友不動産の決算解説:住宅

一方、個人向けの分譲住宅事業では図3のように売上高、販売戸数では三井不動産、三菱地所に劣るものの、販売単価では両社を100万円程度上回っています。

図3 住友不動産、三井不動産、三菱地所3社の販売住宅単価

(単位:億円)

会社名

売上高(億円)

販売戸数(戸)

単価(万円)

住友不動産

2,341

4,958

4,722

三井不動産

3,451

7,473

4,619

三菱地所

2,889

6,259

4,615

出典:各社IR資料より筆者作成

住友不動産がマンション単価を高くできる要因としては、東京23区や駅前などの高価格で販売できる物件を中心に販売していることが挙げられます。2014年3月期決算で新規販売となったマンションは、シティタワー神戸三宮(神戸市中央区:三宮駅徒歩4分)。シティタワー上尾駅前(埼玉県上尾市:上尾駅徒歩2分)。シティテラス加賀(東京都板橋区:板橋区役所前駅徒歩9分)等、駅近くの物件です。また、2015年3月期決算計上予定の物件も、スカイフォレストレジデンス(東京都新宿区:高田馬場駅徒歩6分)。グランドミレーニア(東京都豊島区:池袋駅徒歩6分)。スカイティアラ(東京都板橋区:志村坂上駅徒歩8分)であり、東京23区及び地周辺の駅近物件を中心に販売している点が、住友不動産の分譲住宅販売単価が高い要因になっています。