完全養殖ができないうなぎ うなぎ市場は先細りか
とはいえ取り扱い品種を変えても、結局はヨーロッパウナギやニホンウナギと同じ末路をたどることが、現状では避けられない状態です。その理由は、うなぎの完全養殖が極めて難しいことにあります。普段何気なく口にしているうなぎですが、実は謎の多い魚類の一つ。その産卵地が特定されていない品種が多いことや、消化管から餌が見つからないため、何を食べて成長しているのかがわからないことから、長らく完全養殖は夢ではないかと言われ続けてきました。2010年には水産総合研究センター増養殖研究所で、世界で初めてとなるうなぎの完全養殖に成功したものの、その手間や成長日数の長さなどから民間企業の実用化には至っておらず、天然うなぎの数十倍もの価格で取引されているのが現状です。今後完全養殖の技術が確立され、民間企業での実用化に至った場合は、あるいは流通量増大や価格の下落につながることも考えられますが、この着地点に至るには、まだ時間がかかりそうです。品種変更などで一時的な豊漁があったとしても、うなぎ市場にはまだ明るい兆しは見えそうにありません。
おわりに
手を変え品を変え、当面は市場に上がり続けるであろううなぎ。しかし、いずれはすべての種がレッドリストに掲載され、日本経済において市場自体が確立し得なくなるという可能性は決して低くはありません。そうなれば、完全養殖の技術が確立されても、以前ほどの低価格で手に入ることが難しいと考えると、日本経済におけるうなぎ市場は非常に厳しい局面を迎えていると言えるのではないでしょうか。