30代から40代を中心に年1回決算型の投資信託を選ぶ人が増えているようだ。

日本経済新聞の報道によれば、上場投信など除いた年1回決算型の投資信託の3月末時点の純資産残高は12兆1335億円と前年度末比1割増となり過去最高となったとのこと。投資評価会社の三菱アセット・ブレインズが集計したという。

根強い人気の毎月分配型投資信託と、注目が高まってきている年1回決算型投資信託は一体何が違うのか比較していこう。

分配頻度の違いだけではない

投資信託,毎月分配型
(写真=PIXTA)

毎月分配型と年1回決算型の違いは分配金がもらえる回数だけではない。両者は異なる運用方針を想定して設計されている。

毎月分配型は、毎月決まった水準の分配金を支払うことを目的としている。1か月間の運用成績が毎月同じになることはあり得ないが、損益の状態に関わらず安定的に分配金を支払うことを目的としている。そのかわり、分配金に見合う運用成績があげられなかった場合はファンドの価値を表す基準価格が下がる。株価が下がるのと同じことだ。

一方、年1回決算型は分配金を払うか否か、払う場合の金額は運用成績に応じて変化する。一般的に毎月分配型に比べて分配金の合計額は低めに抑えられている。年1回決算型は長期的な資産形成を目的としているからだ。分配金を抑えることで運用に回せるお金が増えるため、運用効率が上がる。ただし安定的な分配金は得られない。配当収入を重視する人には向かないということだ。

年1回分配型が堅調な理由

年1回決算型は、毎月分配型に比べて分配金を受け取る回数が少なく、分配金の合計額も控えめだ。にもかかわらず人気を集めているのは、こちらの方が資産を増やす効果が高いからだ。運用で得た利益は、分配金として払い出すよりも、元本に上乗せして次の投資に回した方が運用効率の点で有利である。これを「複利効果」という。年1回決算型は、毎月分配型に比べて複利効果が高いのだ。

年1回決算型投資信託の主な買い手は30代から40代の現役世代である。彼らは教育資金や老後資金といった長期的な資産形成に関心が高い。そのため、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)の運用先として、年1回決算型投資信託を選ぶ人が多い。

売れ筋は依然として毎月分配型

運用商品の中で依然として人気が高いのは毎月分配型投資信託だ。ピーク時に比べ2割以上残高を減らしてはいるものの、2017年3月末時点で32兆805億円と、年1回型の2倍以上の市場を持つ。証券会社の売れ筋ファンド上位には、常に毎月分配型が名を連ねる。

毎月分配型の支持が厚いのはシニア層だ。一般社団法人投資信託協会が2015年におこなったアンケート調査によると、投資信託を保有する人のうち、毎月分配型を持っているのは30代以下では29%にとどまるのに対し、60代・70代は64%を超える。分配金の使い道は、「自分のこづかい」と「生活費」が特に高い。給与収入がなくなり年金不安がある世代にとって、毎月の決まった分配金は収入の代わりとして心強いのだろう。

だがよく指摘されるように、毎月分配型商品は運用効率という点で他の金融商品に劣る。ひとつは先ほど述べた複利効果が得られないこと、もうひとつは「特別分配金」の存在だ。

毎月分配型の分配金は年1回型よりも高く設定されており、運用利回りも一見良さそうに見える。しかしそれは元本を取り崩して分配金の原資に充てる特別分配金に負うところが大きい。決められた分配金に見合う運用成績があげられなかった場合に元本を払い出すことで分配金を支払うのだが、もともとは自分の資金である。「もうけではないのに利益のように見せかけている」とすこぶる評判が悪い。

税金の問題もある。分配金は課税の対象になるのだが、分配回数が多いほど課税額も大きくなる。分配頻度が高く金額が大きめの毎月分配型は年1回型よりも税金が高くなりがちだ。また、分配されたお金を使うのではなく再投資する場合、NISA口座では再投資分も非課税枠にカウントされるため、120万円しかない非課税枠を余分に使ってしまうことになる。(証券会社によっては再投資分は課税口座での買付になる場合もある)

このように、複利効果、特別分配金、税金、非課税枠の点からも毎月分配型のデメリットが指摘されており、長期的で効率的な資産運用には向かないことが分かる。

目的による使い分けを

一概に毎月分配型を買うことが愚策だと言いたいのではない。毎月安定した分配金を受け取れるのは誰にとっても魅力的だ。シニア世代になると長期的な運用効率よりも毎月の生活費の補てんに目がいくのは自然なことだろう。重要なのは、目的に合った商品選びができるかどうかだ。

同じファンドでも毎月分配型と月1回決算型を選べる商品もある。分配金を重視するなら毎月型を、長期的な資産形成を重視するなら月1回型を選ぶといいだろう。いや、複利効果を考えるなら分配金がないタイプの投資信託にするのでも全く問題ない。

似たような商品があると「どちらがトク?」といった視点になりがちだが、大事なのは金融商品を選ぶときに自身の目的を明確にすることだ。(篠田わかな フリーライター)

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