商品テストのバーチャル化

2、3年に一度は、新しい技術で"博打を打つという考えを持ち続け、今後の世界に影響しそうなテクノロジを、社会、経済、人口動態などを踏まえながら分析し、ITの視点からそのテクノロジがビジネスをどう変えるのかを考えているのです。そこで取り組みとして行ったことが、パッケージ見本や消費者テストのバーチャル化であると言えます。これまでは、新商品を開発する際には、色やラベル、大きさなどを変えた商品の模型を複数つくって、それを使って約一か月半ほど消費者テストを行い商品化していましたが、そのプロセスについて模型をバーチャル化したものを使って商品テストをするようにしたとのことです。また、Caveという仮想空間を商品の陳列棚に用いて、消費者がCave内でショッピングすることフィードバックが得られるようにしています。これによってそれまでは数週間かかっていたテストの結果が数分で得られるようになったということです。また、全体最適と個別最適は9:1の割合を目安にしているというグローバルシテスムの在り方で、標準化されたシステムは重要、しかしローカルな条件であるその土地の法制度やマーケティング方法などはその土地に合わせるほうが良いとしています。ERPについて、少なくとも同じマーケットについては標準化したほうが効果的としています。

P&GはSymphony IRI Group社を通して、小都市でのメディアミックスの変化状況を調査したり、Yahooの協力を得て、Hawkeyeという自社のデジタルメディア購買最適化システムも利用しています。ロレアルやエスティー・ローダー等のライバル社たちもFacebookやGoogleと連携し、それぞれのデジタルマーケティングを進めていることから、デジタルマーケティングの差が、勝敗を分けると考えているのです。外資メーカーのロレアルにしてもP&Gにしてもユニリーバにしてもジョンソンエンドジョンソンにしても日本で働くことに価値が無くなってきています。

現在のP&Gの戦略部隊はシンガポール、ユニリーバは中国に人をたくさん送っています。外資メーカーで日本支社にいれば、大元のマーケティング戦略を立てるのではなくそれを実行することになるのです。


CIOが率先し技術の提案をCEOに行う必要性

複数のシナリオを想定しなくてはいけない、ということを、P&G会長のラフリー氏は、繰り返し述べており、その上で、難条件となるそのシナリオの実施にあたってぶつかる壁を見極めることで戦略に引き上げ、戦略シナリオを導き出していっているのです。ですから戦略シナリオとは、自社の成功プロセスを描いたストーリーであり、市場のどの部分で勝負し、勝利を手にするかをストーリーで描くことだと言えます。

そしてパッセリーニ氏が日本のCIO向けに「CIOという役割が確立していないことは、むしろ率先して利用した企業に競争優位というチャンスがもたらされる」とアドバイスしていることから、今想像以上にITの適用範囲は広がっており、業務の効率化のためにITの可能性を信じてCIOが率先してCEOに技術の提案をすることが望ましいということは、ビジネスのすべての領域で通用することだと言えます。