不動産売却のため、査定を依頼したところ相場の半額だと言われた……。
よくある理由が、隣地の空き家が廃墟となっているというようなケースだ。物件によっては空き家の所有者の行方すらつかめないこともり、近隣の空き家問題はやっかいだ。隣地の空き家についての問題点や対処法を解説しよう。
空き家になってしまう原因
空き家が増加している原因に、人口減少や高齢化社会が問題となっている。人口が減っているのに住宅が供給過多になると空き家は増える。高齢者マンションや施設に入所する人が増えると確かに空き家になってしまう。このような事が原因で空き家になった物件でも積極的に利活用できれば増加を食い止められるようにもおもえる。しかしそう簡単には片付かないようだ。
空き家を保有している人はなぜ放置しているのだろう。2016年に公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会が実施したアンケートの結果では次のような回答が出ている。
- 特に理由はない。売却や賃貸、解体等を特段考えたことがないから……17.0%
- 将来、自分や親族当が住む可能性があるから……14.1%
- 普段は利用していないが、年に数回利用しているから……13.4%
特に考えていないと応えた人は、空き家でも住宅としての特例を受け、固定資産税が減額されていることも背景にあるだろう。「将来、自分や親族当が住む可能性があるから」という回答のように将来住む可能性と言われると納得のいくように聞こえるが、実際の所は思い出の実家だから「そのうち誰かが住むことになると思いたい人」が多い。祖父母の家、両親の家はなかなか取り壊したり、売却したりできないという人達だ。
また3番目(普段は利用していないが、年に数回利用しているから)については、その「利用方法」のほとんどが物置としている。捨てることのできない不用品でいっぱいのごみ屋敷化してしまう空き家だ。
「売らない」のではなく「希望の価格でなければ売らない」所有者たち
前述のアンケート結果の殆とには似通った心境の所有者たちがいる。放置している人達の多くが過去の相場価格を忘れずにいるのだ。土地だけでも高く取引された時期である。都市中心部ならまだ「土地価格」を重視した古家の取引もある。
しかしこれだけ空き家が増えているということは、土地も余ってきているのだということに気付かなければならない。単に路線価を参考にしても空き家は売れない。取り壊してそこに新たな家を建てる価値のある人気のエリアでなければ、「土地だけの価格」では売れない時代である。そのことを理解できている人がとても少ない。賃貸や事業に活用しようという買主の手が上がったときにはその内容について聞く耳を持たなければ、売却のチャンスを逃し、放置したあげく家はどんどんと廃墟化してしまう。
このように「決断できない空き家の所有者」の隣で家を売りたい人にはたまったものではない。ゴミ屋敷や倒壊寸前の隣家が影響してとんでもなく低い査定価格が出てしまう場合だ。文句を言いたくても世代も代わり、まったく連絡が付かない場合が少なくない。こんな場合はどうすればいいのだろうか
査定は何社か受けてみる。確定測量も視野にいれて
あまりにもかけ離れた価格での査定にはすぐに応じないほうがいい。何社かに査定を依頼してみる必要がある。近隣物件で約定経験のある不動産会社なら売却するためのアドバイスが得られるはずだ。一方で隣地の所有者を探す努力もしてみる必要がある。各市町村でそれぞれ整備の度合いに差はあるが、隣地所有者の行方に関しての情報が以前より整いつつある。
もし隣地との境界が不明な場合は確定測量を土地家屋調査士に依頼することも視野にいれてみよう。彼らの業務には隣地の所有者を調査し筆界確認のための立ち合いを行うことも含まれている。慎重に隣地の所有者(時には相続人)を探し立ち会う機会を設定してくれる。
隣地の空き家のせいで家が売れない。今後はめずらしくないケースとなってくるだろう。しかし家の売却の難航を隣地の空き家のせいにしていても事は進まない。積極的に自身の不動産の価値に見合った売却が出来るようにすぐに対処を講じることが先決である。(片岡美穂 行政書士、元土地家屋調査士)