「(金融危機などの変動に対する耐久性が)テストされていないロボアドが、市場のリスクになりかねない」との懸念が、米証券取引委員会(SEC)やNasdaqから指摘されている。

ミレニアム世代を中心に大人気のロボアドは、今年31兆円市場に成長すると予想されている。「気軽に小口投資」というフレーズの裏にひそむ安易な投資の危険性が、金融市場に決定的な打撃を走らせかねないとはだれにも断言できない。

リスクを把握していない「手軽さ」がマイナス効果を生みだす

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(写真=Thinkstock/GettyImages)

「誰でも手軽に投資を楽しめる」というコンセプトで、新たな資産運用モデルの位置づけを確立したロボアド。簡単な個人情報やリスクへの耐久性を選択するだけで、あとはロボットが自動的に「最適なポートフォリオ」を構成し、資産運用してくれる。

テクノロジーと包括的な発想でミレニアム世代を中心にデジタル投資旋風を巻き起こし、世界中のロボアドが運用する資産総額は年内には2850億ドル(約30兆9738億円)に達すると見こまれている(Aite Groupデータ )。

比較的少額の投資から試せるという点でも、投資の知識がまったくない初心者がなんの下調べもなく足を踏みいれられる環境を提供している。しかし「手軽さ」の裏には危険性が潜んでいるという事例は珍しくない。「投資家にとっても市場にとっても、マイナス効果を生む危険性をはらんでいる」という一部の懸念も納得がいく。

ロボアドのアルゴリズムでは金融危機に対応できない?

SECは今年2月、ロボアドの利用にあたり、「(投資の判断基準となるデータなど)何をベースに投資アドバイスが行われているのか」といった、重要事項に関する事前調査をおこたらないよう投資家に呼びかけた 。

Nasdaqは昨年3月の時点で、「ロボアドはアドバイザーではなく、アルゴリズムによるオンラインソフト」 である点を強調し、最大の リスクとして「不透明性」を挙げている。
まずロボアドは歴史が浅く「(金融危機などの実地に)試された前例がない」。現時点ではリスクへの対応力がまったく不明というわけだ。2008年の金融危機の際、ウォール・ストリートが誇るリスクモデル(アルゴリズム)が、結果的に22兆ドル(約2390兆9600億円)という損害をだしたのは記憶に新しい。

つまり「テクノロジー=アルゴリズム=安全で確実」などという方程式は、投資の世界には存在しないということだ。ロボアドがリーマンショック級のリスクをどのように察知し、対応するのか、今のところ誰にも予測がつかない。ロボアドに使われているアルゴリズムの多くが、熟練した投資家から見ると「単純過ぎる」 との指摘もある。

ソフトを開発しているのはアドバイザーではなくプログラマー

次に「責任の所在の不透明さ」だ。GoogleやAppleが開発している自動運転車では、事故が生じた際の責任の所在について議論されているが、ロボアドにも同様の疑問が当てはまる。

ロボアドの利用で投資家が大きな損害をこうむった場合、その責任はだれがとるのか。あくまで投資家の自己責任の範囲なのか、ロボアドを提供する企業が責を負うのか、それともソフト開発側のプログラムミスになるのか。

ロボアドの業務自体はSECに登録する必要があるが、ソフトを開発しているのはあくまでプログラマーであるため、通常のRIA(独立系登録投資顧問業者)に適用される基準に達している必要はない。

そもそも投資経験豊富なソフト開発者の割合に疑問がわく。テクノロジーには長けていても、投資の知識がゼロに近い人間が設計したソフトを全面的に信頼するというのも、考えてみれば奇妙な話だ。

長期的な投資にはロボアドは不向き?

「コストの不透明さ」 も気にかかる。低コストを売りにしているロボアドだが、手数料・為替手数料・売買手数料・信託報酬など、企業によっては細々とした追加が重なり、最終的なコストが予想を上回るといったことも珍しくはないようだ。

RIA(個人向け投資アドバイザー)よりもコストをおさえられるのは事実だが、ETF(上場投資信託)の投資アドバイス・サービスなどを利用した方が、総合的には安あがりになるとの意見もある。そのうえ、ETFならば必要に応じて人間のアドバイザーからアドバイスも受けることも可能だ。

LIMRAの2015年のデータによると、ロボアドの利用者はY世代(1980年代から1990年代生まれ)が11%と最も多く、X世代(1960年代から1970年代生まれ)が7%、ベビーブーマー世代(第二次世界大戦後から1960年以前生まれ)は1%と、年代ごとに大きな差が開く。

この事実からデジタル世代がロボアドの主流顧客であることがわかるが、「それゆえに十分な情報に基づいた冷静な判断をくだせるほどの投資経験を積んでいない」点が懸念されている。

米ファイナンシャル・アドバイザー、マット・ローガン氏 は、これらのロボアド顧客が市場の変動に動揺し「早まった判断をくだしかねない」とし、長期的な投資にはロボアドは不向きだという見解を示している。現時点での結論としては、個人の投資スタイルに合わせてロボアドと人間のファイナンシャル・アドバイザーの使いわけ、あるいは併用が最善策といったところだろうか。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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