飛び込み営業するとき

残念な営業マンは、なぜ必要なのか悩みながらやる
できる営業マンは、訪問件数を決めてがんばる
一流の営業マンは、限界に挑戦する

みなさんは、1日に最大何件、お客様を訪問できるか、試したことがあるでしょうか。仕事というのは、一度、限界に挑戦すると見えるものがあります。

トップセールスマンによる講演や本を見ると、1日300~400件と書かれているものが多いのですが、私はこれを、実際に試したことがあります。

(本記事は、高野孝之氏の著書『プロフェッショナルが実践している営業の哲学』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています)

自分だけのデータを手に入れ、数字を科学する

営業マン
(写真=PIXTA)

私が担当していた東京都港区の六本木地区で、午前9時から午後5時までの8時間、昼休みの1時間を除くと正味7時間。私がこの時間に訪問できた件数は、126件が最大でした。

集合住宅に名刺やチラシを投函することを1件とカウントすれば、300件以上も可能ですが、実際に企業のお客様に面談することを目的とした訪問では、この件数が限界というのがわかったわけです。

飛び込み営業のコツは、ビルの最上階から1階まで丸ごと訪問することです。まずは、ロビーで入居企業を確認し、エレベーターで最上階まで登ります。そして、最上階から1階ずつ降りていき、各階のお客様全部を訪問していくのです。

もし、1件でも「このお客様は売れる可能性が低い」と勝手に判断して訪問をやめてしまえば、それが自分に対する言い訳になり、そのうちどの会社も「ここは訪問不要だ」と思えてきて、たくさんのお客様を訪問することができなくなります。だから、自分に甘えを許さないためにも、いっさいの例外を設けず、すべての会社を訪問するのです。

私がいた日本アイ・ビー・エム株式会社では、見込みのお客様に電話でアポイントをとるのですが、このときも同様に試してみたところ、こちらは1時間に平均6件、1日にすると約50件が最大であることがわかりました。

このようにして一度限界までチャレンジし、自分だけのデータを手に入れられると、限界の先で経験と知識が体系化され、数字をサイエンス(科学)の目でとらえることができるようになります。

水を熱すると、誰がやっても100度で沸騰するのと同様に、営業も、科学的手法にもとづいて実践すれば、誰がやっても大きな成果を出すことができます。営業は決して気合いと根性の仕事ではありません。だからこそ、私たちはまず自分の限界を知り、それをベースに目標を達成するための論理的な計画を立てることで、確実に数字を自分のものにすることができるのです。

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仕事は「量」ではなく「時間」で決まる

期末に近づくと

残念な営業マンは、言い訳を考え始める
できる営業マンは、追い込みをかけて達成する
一流の営業マンは、すでに目標は半年で達成している

小中学生のころ、ギリギリになるまで、夏休みの宿題に着手しなかった経験がある人は多いと思います。

また職場では、いつも残業している人は、「残業すること」を前提にして仕事を進めていることが多いと思います。反対に、いつも定時に帰る人は、「定時までに仕事を終えること」を前提にして仕事をしています。

これらの共通点は、英国の歴史学者・政治学者であるパーキンソンが次のように提唱し、これは「パーキンソンの法則」として知られています。「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」。

つまり、仕事というものは、「量」ではなく「時間」で決まるということです。

これを逆に考えれば、デッドライン(期限)を本来のものよりも短くして、少し無理な設定をして、タイトな時間の中で頑張って仕事をしたほうが、生産性は高くなるということです。

この考え方は、営業の仕事にも当てはまります。すなわち、会社から与えられた目標数字の達成にかける時間を、決められたデッドラインよりも短くして、意識して生産性を上げようとすればよいのです。

現場の営業マン時代、私は「1年を半年」と考えて自分自身のデッドラインを通常の半分に設定し、仕事をしていました。

半分の時間で目標達成しようとすると、「営業の質」が劇的に変化します。「あと3ヶ月、いや6ヶ月あったら絶対、この数字を達成できたのに」なんて言い訳をする営業マンをよく見かけますが、私は逆に考えて、半分の時間で目標達成することを自分に課していたのです。

実際に締め切りさえつくってしまえば、なんとか帳尻を合わせようとして、あらゆる努力や工夫をして、仕事は締め切りまでに終わるものです。

私は営業の2年目から会社の年間目標を半年で達成してしまい、「残りの時間で何をするか」を考えていました。

目標達成した人間に対して、会社や所属する部門の責任者は、その人が成長することに協力的になってくれます。たとえば私は、ほとんどの社内の技術研修やリーダーシップ研修に参加しました。それも終えると、社外の営業研修や一流の営業マンの講演、異業種交流会など、さまざまな研修を年間20日以上受講し、自分のスキルを磨きました。

このように、早期の目標達成が自己の成長を生み、さらなる高い業績につながるという好循環を生むのです。

最初から社長に会えばいい

営業先の社長に対して

残念な営業マンは、そもそも会うのを躊躇する
できる営業マンは、契約のときに挨拶する
一流の営業マンは、最初から会いに行く

お客様の会社の社長にお会いすることを、躊躇する営業マンが多いのは、自分で心の壁をつくっているのが原因です。

実は社長は、あなたからの積極的なコンタクトや提案を求めている場合が少なくありません。若手営業マン時代、私も親子以上に年の離れた社長に会うことに気後れしたものです。でも、ある社長と直接商談を行ったとき、その社長に短期間で結論を出していただき、社長に会うことの大切さを痛感した経験があります。

ある月曜日の早朝、私は新規訪問で一度うかがっていた外資系食品販売業のR社の社長と、運よくその週の水曜日にアポイントをとることができました。

お会いした社長は気さくな方で、「何かお困りのことはないですか?」という私の質問に対して、率直に現在のR社の課題を話してくれました。その社長は、自社が最近抱えている業務上の課題に気づいていて、営業マンに相談に乗ってほしいと思っていたのでしょう。

幸いにもその時期、私は同じような課題を抱えていた別のお客様に提案書を出していました。そのため、お客様の課題と原因、そして解決策をホワイトボードに書いて、その場で社長に説明することができました。

面会の1週間後、私は2時間かけて提案書の説明と最新の業務システムのデモを行いました。翌朝、契約書に捺印をしてくださいました。

R社の社長との面談から契約成立までたったの1週間でした。ここであらためて考えてみてください。会社経営の意思決定は代表取締役社長が行うものです。常務会など他の意思決定機関があったとしても、形式的な場合が多いですし、議論や報告はなされても、最終決定は社長が行う場合がほとんどです。

もちろん業種にもよりますが、営業活動の初期のタイミングで、社長にお会いして商談を進めることができれば、短期間で契約がとれる可能性が高まります。

社長と面識をもてていれば、たとえ競合があっても、あなたの顔を思い浮かべてもらうことで、競争優位に立てることがあります。さらには社長と面識があることで、その会社の別の方に会って営業を進める場合でも、商談がスムーズになり、提案できる範囲が広がることから、多くの商談案件の契約につながる可能性が高まります。「社長」という立場の人に会うことが怖くなくなると、取締役や部長に会うことも怖くなくなり、目標達成にかかる時間が短縮されます。

高野 孝之
スマートライン株式会社 代表取締役社長兼CEO